十万山、雨の本渡市を一望する−第4集−
[天草特集のトップ]  [目次ページ]  [があ子の自己紹介]  [リンク集]

雨の十万山を登る。 (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます)

 04年5月、今日の熊本県天草諸島は、あいにくの雨です。降ったりやんだり、しとしととしています。遠くへ自転車を漕ぎだせそうにないので、わたしは本渡市街地の周辺をポタリング(自転車での散歩)することにしました。

 わたしが向かったのは本渡市街地が一望できる標高200メートルあまりの十万山(じゅうまんやま)です。市中心部から5キロメートル弱のところにあり、十万山の頂上付近には大きな展望台や公園が整備されています。市民の方が気軽にハイキングを楽しめる場所です。

十万山の展望台から本渡市街地を一望する。クリックすると拡大します。

 雨の日は視界が悪く、路面が滑りやすいうえに、体温が下がって感冒をひいたり、大切な自転車が錆びてしまったりと、何かと条件が悪いので、これまで雨のツーリングは避けてきました。でも、せっかく天草に来て、1日お宿でゴロゴロするのはもったいないと思い、小雨になったタイミングを狙って、自転車で十万山を目指して出発しました。

 わたしは、高い防水性の新素材“ゴアテックス”の上着をしっかり着込み、十万山を目指してペダルを回しました。一方、同行した専属カメラマン(専カメ)の上着は普通のナイロン製なので、縫い目から見る見る間に雨水がしみて、綿の下着が水を含んで重く冷たくなっていました。これに対して、わたしのゴアテックスの上着は、ほぼ完全に水を弾き返しています。

 2年ほど前、専カメを連れて自転車用の上着を買いに行ったとき、わたしは思い切って3万円もの巨費を投じてゴアテックスを買い求めたのに対して、専カメは普段の浪費が災いして8000円のナイロン製の上着しか買えなかった経緯があります。この違いが、雨の十万山において明確な格差となって表れました。

 このようにゴアテックスの防水性、保温性は高く評価できるのですが、ひとつ大きな欠点は価格が高いということです。

 専カメのナイロン上着に比べて、わたしのゴアテックス上着は4倍近いお値段もするので、やはり高すぎます。それに、雨の日以外では、ナイロン製もゴアテック製も、着心地や防風性などの面で大して差が出ないという厳しい現実もあります。どなたか、安くて、ゴアテックスと同等の防水性のある“新素材”発明してください!

クリックすると拡大します。
九州のなかの天草諸島の位置関係を示した図です。クリックすると拡大します。
本渡市周辺の全体図です。
より詳細な地図です。
カシミール3Dでより立体的な地図をつくりました。
雨の十万山を登る。
竹林の道をゆく。 (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます)
クリックすると拡大します。
十万山の頂上を目指す。
十万山の山頂へ続く道。
杉の街路樹の後ろに広がる竹林。
十万山の頂上にて。
山頂からの眺め。

 そうこう考えているうちに、十万山の中腹まで登ってきました。周囲は水滴が弾けて、霧がかかっているようです。雨雲を透過して地表に届いた弱々しい太陽光が空気中を漂(ただよ)う水分に反射し、白く霞(かす)んで見えます。

たくさんの竹がにょきにょきと空に向かって伸びていました。

 山頂に続く道の両脇には、たくさんの竹がにょきにょきと空に向かって伸びていました。竹の葉は、微少な水滴に包まれ、まるで表面加工が施されているようです。緑色がより強く輝いていて目にしみました。たっぷりの水滴と、光を遮るほど繁茂した竹林によって、晴れの日では味わえない幻想的な空間が形づくられています。

 雨のためか、十万山に登ってくるクルマや登山者の姿はほとんどなく、あたりは静まりかえっていました。晴れの日に比べて、鳥の鳴き声も少ないように感じました。自分の呼吸やギアとチェーンの噛み合い、タイヤと路面の摩擦する音が聞こえるだけです。

 しばらく登っていくと、視界が開けて頂上に着きました。展望台にあがると目の前に本渡市の全景が広がりました。本渡市は小さな街なので、十万山から市街全体が見渡せます。本渡市街地でいちばん大きなスーパーの「サンリブ」や、市内唯一の映画館のある目抜き通りもよく見えました。本渡港には、熊本港から来た高速艇が入港しようとしています。

山頂の展望台にて。

 展望台から、本渡市街地を眺めているとき、さっきまでしとしと降っていた雨が止んでいるのに気づきました。空を見上げると、低く垂れ込めた雨雲の色が、心なしか明るくなっているように見えます。わたしは、このわずかに雨がやんでいる時間を使って、天草・上島のほうへ足を伸ばしてみることにしました。

天草・上島の船場へ。 (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます)

 天草諸島は、たくさんの島からなっていますが、なかでも大きい島は、上島と下島です。本渡市は下島にあり、今回の天草ツーリングでは、主に下島を走りました。上島と下島は、隣接していて、数十メートルの小さな橋で結ばれています。わたしは、少しだけでいいから、上島にも足を伸ばしたいと思い、この橋を渡ってみることにしました。

昇開式の可動橋「瀬戸歩道橋」。その後ろに橋脚の長い「瀬戸大橋」が見えます。

 ◆2本ある橋のうち、1本はクルマやトラックが通行できる大きい「瀬戸大橋」で、橋脚が長く、橋の下を船が通行できるようになっています。もうひとつの橋は、歩行者と自転車専用の「瀬戸歩道橋」で、橋脚が短く、そのままでは船の通行は困難です。このため、橋桁がエレベーターのように上へ移動する“昇開橋”と呼ばれる可動橋の構造をしています。押すと写真が出ます。

 1日に何回か橋桁が上がるようですけれど、わたしが通行したときは、橋桁がおりていて、地元の方の往来が頻繁にありました。橋脚の長い大きな橋は、歩行者や自転車にとって、いちいち何十メートルも高いところまで登らなければならないし、クルマの往来も激しいために苦痛です。この点、背の低い瀬戸歩道橋は、のぼらなくてもいいですし、クルマの通行もないため、歩行者や自転車にやさしい橋との印象を受けました。

 昇開式の可動橋「瀬戸歩道橋」で上島に渡ったわたしは、交通量の少ない道沿いに、ポタリングを続けました。とくに目的地はなかったのですが、とりあえず隣接する船場(せんば)という集落まで行ってみることにしました。

 船場に着くと、集落の入口付近にある神社の境内に、大木が立っていました。樹齢数百年はあろかと思われる大きな木で、地元の方々が大切に守っておられる御神木のようです。船場は海に面した集落で、入り江には10隻ほどの漁船が舫(もや)っていました。多くの漁船は、漁に出ているためか、集落のなかはとても静かでした。

 また、ぽつぽつと雨が降ってきたので、わたしは本渡市街地のお宿に引き返すことにしました。自転車は、晴れの日に漕ぐのがいいに決まっていますが、それでも、幻想的な雨の十万山や、地元にやさしい昇開橋の瀬戸歩道橋、船場の御神木が見られて、充実したポタリングとなりました。

 ◆ここをクリックすると「[第5集] 通詞島、快晴の天草最終日」に続きます。

クリックすると拡大します。
正面が本渡港。その手前に本渡市街地が広がります。
昇開橋の「瀬戸歩道橋」にて。
船場の御神木の前にて。
御神木はとても大きく、下から見上げないとカメラのフレームに収まりません。


[天草特集のトップ]  [目次ページ]  [があ子の自己紹介]  [リンク集]
前のページに戻ります。