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【1】離島・沼島では伝統が受け継がれる
淡路島総力特集
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沼島へ出発。 (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます)

 淡路島・五色町(※)に活動拠点を構えたわたしは、まず沼島(ぬしま)へ向かいました。待ちに待った淡路島を本格的に走り始める日がやってきました。体力や気力がまだ十分にあるうちに、できるだけ遠くに行ってみようと考えたわたしは、淡路島の離島・沼島へ行くことにしました。この日は、天気にも恵まれ、どんなに遠くても行けるような気分です。

淡路島の離島・沼島(ぬしま)のメインストリートにて。突き当たりには大きな神社がありました。

[前回までのあらすじ]
 2005年初夏、淡路島にやってきました。活動拠点を五色町(※)として全島をくまなく自転車で走ります。※五色町は2006年2月11日に隣町の洲本(すもと)市と合併して洲本市になりますが、今回のツーリングでは合併前であるため「五色町」の表記を使います。

 沼島は、五色町とは反対側の紀伊水道方面に浮かぶ小さな島です。面積は約2.5平方キロメートルで、日本一小さい市として有名な埼玉県蕨市(わらびし)の半分ほどの大きさです。1日に10往復ほどの定期船が運航している以外、島への公共交通の手段はありません。仮に淡路島が離島だとすれば、沼島は“離島の中の離島”ということになります。

 わたしは、午前11時55分に沼島へ発つ定期船に狙いを定め、朝8時に五色町のお宿を出発しました。定期船は五色町から約32キロメートル離れた土生(はぶ)港(※)から出航していますので、平均速度9−10キロメートルを維持すれば、船が出航する時間までに港へ着くことができます。土生港は、紀伊水道に面したところにあるため、五色町からは淡路島を横断する形で自転車を進めていきます。※灘ターミナルセンターの開設により、2005年5月から発着場が数百メートル移動しています。

 沼島はとても小さい島なので、自転車で走るだけの道が存在するかどうか分かりません。そもそも定期船に自転車を乗せてくれるかどうかも分かりませんでした。わたしは、こうした事情を調べるため、前もって船を運航する沼島汽船に電話で問い合わせをしました。すると電話口に忙しそうなおじさんが出て、「はぁ? 自転車を乗せられるかどうかって? そんなのセンシャに聞いてくれ」と、電話を切られてしまいました。

 センシャ(船社)とは海運業界の用語で、船を運行する会社のことらしいのですが、沼島汽船の事業形態や連絡先がよく分からず、結局、ぶっつけ本番で臨むことになりました。もし、自転車で行けないとしても、「歩いて島を散策しても楽しいだろう」と、考えていましたが、案の定、自転車では行けずに、歩くことになりました。

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今回の活動地域を示した地図です。クリックすると拡大します。
今回の走行ルートの全体図です。赤色が往路、青色が復路を示しています。クリックすると拡大します。
土生港から沼島に至る立体的な地図です。南あわじ市の南東(紀伊水道側)は険しい山々が続きます。
沼島の拡大図です。沼島は山が険しいため徒歩が最も有効な移動手段です。クルマやオートバイが走らないので、島全体がとても静かです。
五色町を朝8時に出発しました。写真は五色町を流れる都志(つし)川にかかる橋にて。淡路島に大きな川はなく、水量もこの都志川のように、それほど多くありません。
タマネギ大好き。 (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます)
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今回の走行ルートの高低差を示した図です。カシミール3Dを使って制作しました。
南あわじ市に広がる一面のタマネギ畑にて。たくさんのタマネギがすくすくと育っています。
タマネギ畑の中を、舗装状態のよい道路が通っています。タマネギのいい香りがします。
タマネギ畑の向こうに諭鶴羽山の山脈が見えます。土生港は山の向こう側にあります。
峠を越えたところで視界が開け、沼島が見えてきました。
この峠を越えれば、あとは下り坂が続きます。坂を下りきると土生港に着きます。

 五色町から地方道66号線沿いに南あわじ市の中心市街地の三原地区まで行き、そこからさらに地方道76号線に乗り換えて土生港を目指しました。

五色町にて。これから土生(はぶ)港へ向かいます。土生港までは約32キロメートルの道のりです。

 南あわじ市に向かう途中、まず目についたのが、あたり一面に広がるタマネギ畑です。淡路島は、農業用水が少ないためか、水を多く使う水田よりも、タマネギのように比較的乾いた土地で育つ作物の方がよく目につきました。タマネギ畑の中を自転車で走ると、タマネギのコクのある香りが全身をやわらかく包み込むように匂ってきます。

 タマネギは洋食の基本となる素材です。オムライスやスパゲッティ、ハンバーグ、シチュー、コーンスープなど、多くの洋食でタマネギを使います。わたしは、深みのあるコクを出すために欠かせないタマネギが大好きです。家で専属カメラマンに料理をつくらせるときは、いつもタマネギを多めに入れるよう指導しているほどです。

 ◆南あわじ市に差し掛かったところで、一面に広がるタマネギ畑について録音しました。「淡路島の名産は“タマネギ”です。その大半が南あわじ市でつくられているのではないかと思うほど、タマネギ畑が広がっています」という趣旨を話しています。この段落をクリックすると音声を再生します。(録音時間15秒、ファイル容量121KB、MP3形式)

わたしの大好きなタマネギの畑の中を、元気よくで走りました。

 ◆南あわじ市で休憩しているときに録音しました。「淡路島では、スポーツタイプの自転車でツーリングを楽しんでいる人の姿が多く見られます。こうして休憩している間にも、自転車ライダーが通り過ぎていく姿が見られました。淡路島は自転車の島です」という趣旨を話しています。この段落をクリックすると音声を再生します。(録音時間21秒、ファイル容量171KB、MP3形式)

 農作物の産地直売を行っている売店があったので、ふと目を向けると、「タマネギ10キログラムで2000円」と書かれた値札がかけてありました。南あわじ市内でとれたと思われるみずみずしいタマネギがビニール製の網に入れてありました。ぶつ切りにしてカレーに入れたら「さぞかしおいしいだろうなぁ」と思いながら、通り過ぎました。

土生港へ向かう。 (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます)

 南あわじ市の中心市街地の三原地区に着いたのは、午前10時頃。出航の時間まではあと2時間弱しかありません。少しペースを上げないと間に合わないため、先を急ぐことにしました。五色町から土生港までは、クルマの交通量の多い国道を横切る形の地方道を走るため、思ったよりクルマが少なくて助かりました。

土生港で沼島汽船の「しまかぜ号」に乗り込むところです。約60人乗りの真新しい客船です。

 南あわじ市の東側(紀伊水道側)は、標高600メートル級の山々が連なり、山脈の傾斜がそのまま海へ突き刺さった険しい地形になっています。このため市中心部から土生港へ近づくと山が間近に見えるようになり、だんだんと民家が少なくなります。

 峠を越えると眼下に海が広がり、その向こうに緑に覆われた沼島がくっきりと見えました。土生港に着いたときは、出航15分前に迫っていたため、急いで乗船券をチケットカウンターで買い求めました。カウンターで「自転車を船に乗せられるか」と聞いたところ、帰ってきた返事は、やはり「センシャ(船社)に聞け」というものでした。仕方がないので人間の分だけの乗船券を購入しました。土生港から沼島までの片道運賃は460円、往復は880円でしたので、往復分を購入しました。(料金は05年7月現在)

 船が接岸する岸壁まで自転車を押していき、「センシャ」の方と思われる船員の方に改めて自転車のことを聞いたところ、「沼島は自転車が走れるような道路はないので、持っていっても意味がないよ」と助言してくれました。わたしは船員さんのアドバイスに従って、自転車を土生港に置いていくことにしました。

しまかぜ号の船内にて。沼島は自転車で走れるほどの道路がないため、徒歩で行くことにしました。自転車は土生港に置かせてもらいました。指さした先に自転車を停めました。

 岸壁に接岸している船をよく見ると、60人ほどが乗れる客船の形をしていて、クルマやオートバイ、自転車などの大型の荷物は積めない構造のようです。陸上を走る乗り物は、山が険しく道路が少ししかない沼島では必要ないことが、船の形から容易に想像できました。船体は真新しく、船の中は冷房が効いています。乗船すると、船はすぐに出航しました。エンジンがうなりを上げて、勢いよく進んでいきます。沼島がどんどん近づいてきて、10分ほどで到着しました。

 ◆沼島汽船の客船について録音しました。「沼島汽船の船は、真新しい船体で、とても速く進みます。1日10便ほど沼島と淡路島を往復していて、とても重要な交通手段です」という趣旨を話しています。この段落をクリックすると音声を再生します。(録音時間31秒、ファイル容量246KB、MP3形式)

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しまかぜ号の船内にて。冷房が効いて、まるで新幹線のような青くてきれいな座席が並んでいます。
沼島の青い海をのぞき込むと、たくさんの魚が泳いでいました。
沼島の青い海に、白いしまかぜ号がよく映えます。
沼島の航空写真。
沼島の集落の中にて。
集落のメインストリートの奥には、大きな神社がありました。
集落の路地にて。クルマが走らないため、まるで時が止まったように静かです。
沼島へ上陸。 (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます)
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沼島の高台から紀伊水道を望みました。わたしの後ろはすぐ崖です。
崖に降りていくための遊歩道が整備されていました。
松枯れ病で枯れた松の再生に取り組んでいるそうです。
間近に見る上立神岩(かみたてがみいわ)は大きい。
磯の方から崖を見上げたアングルです。まさに断崖絶壁です。
切り立った崖の下には大きな岩がゴロゴロとして、人を寄せ付けない険しさがありました。
磯釣りを楽しむ姿が見えました。
沼島の山腹で古い民家の写真を撮らせていただきました。高い石垣に大きな門、広い中庭があり、まるで中国大陸の農家のようです。

 沼島に上陸して、まず感じたことは海が透き通るようにきれいなこと。もうひとつは淡路島本島とは町の雰囲気が大きく異なることでした。民家はたくさんあるのですが、人影があまりありません。軒先に洗濯物が干してあり、小学校や中学校もあるので、どこの町でも見られるような家族が住んでいるはずなのですが不思議です。島の大きさに比べて人が少なく、会う機会がなかったのかも知れません。淡路島本島に比べると、はるかに静かです。

沼島港の反対側の磯にある「上立神岩(かみたてがみいわ)」と呼ばれる大きな岩です。高さは30メートルほどあるということです。

 静かさの背景には、人が少ないというより、エンジンの音をまき散らすクルマやオートバイが走っていないことが原因として挙げられます。沼島はクルマで走るほどの道はありません。クルマの音に慣れてしまったわたしは、急にその音がなくなることで違和感を覚え、雰囲気が違うと感じた感じたのかも知れません。クルマが走らない、静かな沼島にとても大きな感銘を受けました。

 客船に同乗てしきた人たちの多くは、釣り竿や魚を入れるクーラーボックスを持っていました。この島は、きっと釣りで有名なのだと思います。また、神社仏閣が数多くあることも特徴のひとつのようです。集落の中心部には大きな神社がありましたし、島を巡る山道沿いには、神様や仏様が八十八か所も祭ってあるそうです。

 日本最古の歴史書「古事記」の中に、神様が次々と島を産んでいく物語「国産(くにう)み」の神話があるそうなのですが、沼島も神様が産んだという伝説があるそうです。沼島の観光パンフレットには「太古の昔、神々が創った最初の島、沼島」というキャッチフレーズがあります。今回は、時間の関係で神様関連の名所をまわることはできませんでしたが、沼島には伝説や神話が数多く残っているそうです。

 ◆沼島の神様について録音しました。「沼島はあんなに小さな島なのに、とても古そうな神社仏閣がたくさんあります。まるで出雲神話に出てくる“おおくにぬしのみこと”のような古代の神様が祭られているかのような印象を受けました。離島という地理的要因が影響してか、たくさんの神様が今もお住まいになっているようです」という趣旨を話しています。この段落をクリックすると音声を再生します。(録音時間36秒、ファイル容量288KB、MP3形式)

 わたしは、沼島を紀伊水道の方へ歩いて横断しました。島の反対側は切り立った崖ですが、遊歩道が整備されて、磯までおりることができます。磯にはたくさんの岩がゴロゴロとしていますが、そのなかでひときわ大きな岩が「上立神岩(かみたてがみいわ)」と呼ばれる神様の岩です。細長い岩が海面から突き出ていて、高さは約30メートルもあります。磯には何人かの釣り人がいて、釣りをしていました。

 ◆沼島で録音しました。「沼島は歩いて3時間ほどで一周できてしまうほど小さな島です。今回は時間がないため、島を横切って反対側の紀伊水道の方へ行きました。島にはたくさんの釣り人が来て、磯釣りなどを楽しんでいました。沼島は釣りでとても有名な島です」という趣旨を話しています。この段落をクリックすると音声を再生します。(録音時間52秒、ファイル容量411KB、MP3形式)

諭鶴羽山。 (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます)

 ◆わたしは13時20分に沼島を発つ船で土生港に戻りました。五色町へは、来た道を戻るのではなく、淡路島で最も高い山「諭鶴羽山(ゆづるはさん)」(標高約608メートル)を越えて帰ることにしました。帰路のツーリングレポートは「【2】淡路島・最高峰の諭鶴羽山を越える」へと続きます。この段落をクリックすると次のレポートへリンクします。



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