| 沼島へ出発。 (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます) |
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淡路島・五色町(※)に活動拠点を構えたわたしは、まず沼島(ぬしま)へ向かいました。待ちに待った淡路島を本格的に走り始める日がやってきました。体力や気力がまだ十分にあるうちに、できるだけ遠くに行ってみようと考えたわたしは、淡路島の離島・沼島へ行くことにしました。この日は、天気にも恵まれ、どんなに遠くても行けるような気分です。
[前回までのあらすじ] 沼島は、五色町とは反対側の紀伊水道方面に浮かぶ小さな島です。面積は約2.5平方キロメートルで、日本一小さい市として有名な埼玉県蕨市(わらびし)の半分ほどの大きさです。1日に10往復ほどの定期船が運航している以外、島への公共交通の手段はありません。仮に淡路島が離島だとすれば、沼島は“離島の中の離島”ということになります。 わたしは、午前11時55分に沼島へ発つ定期船に狙いを定め、朝8時に五色町のお宿を出発しました。定期船は五色町から約32キロメートル離れた土生(はぶ)港(※)から出航していますので、平均速度9−10キロメートルを維持すれば、船が出航する時間までに港へ着くことができます。土生港は、紀伊水道に面したところにあるため、五色町からは淡路島を横断する形で自転車を進めていきます。※灘ターミナルセンターの開設により、2005年5月から発着場が数百メートル移動しています。 沼島はとても小さい島なので、自転車で走るだけの道が存在するかどうか分かりません。そもそも定期船に自転車を乗せてくれるかどうかも分かりませんでした。わたしは、こうした事情を調べるため、前もって船を運航する沼島汽船に電話で問い合わせをしました。すると電話口に忙しそうなおじさんが出て、「はぁ? 自転車を乗せられるかどうかって? そんなのセンシャに聞いてくれ」と、電話を切られてしまいました。 センシャ(船社)とは海運業界の用語で、船を運行する会社のことらしいのですが、沼島汽船の事業形態や連絡先がよく分からず、結局、ぶっつけ本番で臨むことになりました。もし、自転車で行けないとしても、「歩いて島を散策しても楽しいだろう」と、考えていましたが、案の定、自転車では行けずに、歩くことになりました。 | クリックすると拡大します。 |
| タマネギ大好き。 (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます) |
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五色町から地方道66号線沿いに南あわじ市の中心市街地の三原地区まで行き、そこからさらに地方道76号線に乗り換えて土生港を目指しました。
南あわじ市に向かう途中、まず目についたのが、あたり一面に広がるタマネギ畑です。淡路島は、農業用水が少ないためか、水を多く使う水田よりも、タマネギのように比較的乾いた土地で育つ作物の方がよく目につきました。タマネギ畑の中を自転車で走ると、タマネギのコクのある香りが全身をやわらかく包み込むように匂ってきます。 タマネギは洋食の基本となる素材です。オムライスやスパゲッティ、ハンバーグ、シチュー、コーンスープなど、多くの洋食でタマネギを使います。わたしは、深みのあるコクを出すために欠かせないタマネギが大好きです。家で専属カメラマンに料理をつくらせるときは、いつもタマネギを多めに入れるよう指導しているほどです。
農作物の産地直売を行っている売店があったので、ふと目を向けると、「タマネギ10キログラムで2000円」と書かれた値札がかけてありました。南あわじ市内でとれたと思われるみずみずしいタマネギがビニール製の網に入れてありました。ぶつ切りにしてカレーに入れたら「さぞかしおいしいだろうなぁ」と思いながら、通り過ぎました。 |
| 土生港へ向かう。 (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます) |
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南あわじ市の中心市街地の三原地区に着いたのは、午前10時頃。出航の時間まではあと2時間弱しかありません。少しペースを上げないと間に合わないため、先を急ぐことにしました。五色町から土生港までは、クルマの交通量の多い国道を横切る形の地方道を走るため、思ったよりクルマが少なくて助かりました。
南あわじ市の東側(紀伊水道側)は、標高600メートル級の山々が連なり、山脈の傾斜がそのまま海へ突き刺さった険しい地形になっています。このため市中心部から土生港へ近づくと山が間近に見えるようになり、だんだんと民家が少なくなります。 峠を越えると眼下に海が広がり、その向こうに緑に覆われた沼島がくっきりと見えました。土生港に着いたときは、出航15分前に迫っていたため、急いで乗船券をチケットカウンターで買い求めました。カウンターで「自転車を船に乗せられるか」と聞いたところ、帰ってきた返事は、やはり「センシャ(船社)に聞け」というものでした。仕方がないので人間の分だけの乗船券を購入しました。土生港から沼島までの片道運賃は460円、往復は880円でしたので、往復分を購入しました。(料金は05年7月現在) 船が接岸する岸壁まで自転車を押していき、「センシャ」の方と思われる船員の方に改めて自転車のことを聞いたところ、「沼島は自転車が走れるような道路はないので、持っていっても意味がないよ」と助言してくれました。わたしは船員さんのアドバイスに従って、自転車を土生港に置いていくことにしました。
岸壁に接岸している船をよく見ると、60人ほどが乗れる客船の形をしていて、クルマやオートバイ、自転車などの大型の荷物は積めない構造のようです。陸上を走る乗り物は、山が険しく道路が少ししかない沼島では必要ないことが、船の形から容易に想像できました。船体は真新しく、船の中は冷房が効いています。乗船すると、船はすぐに出航しました。エンジンがうなりを上げて、勢いよく進んでいきます。沼島がどんどん近づいてきて、10分ほどで到着しました。 |
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| 沼島へ上陸。 (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます) |
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沼島に上陸して、まず感じたことは海が透き通るようにきれいなこと。もうひとつは淡路島本島とは町の雰囲気が大きく異なることでした。民家はたくさんあるのですが、人影があまりありません。軒先に洗濯物が干してあり、小学校や中学校もあるので、どこの町でも見られるような家族が住んでいるはずなのですが不思議です。島の大きさに比べて人が少なく、会う機会がなかったのかも知れません。淡路島本島に比べると、はるかに静かです。
静かさの背景には、人が少ないというより、エンジンの音をまき散らすクルマやオートバイが走っていないことが原因として挙げられます。沼島はクルマで走るほどの道はありません。クルマの音に慣れてしまったわたしは、急にその音がなくなることで違和感を覚え、雰囲気が違うと感じた感じたのかも知れません。クルマが走らない、静かな沼島にとても大きな感銘を受けました。 客船に同乗てしきた人たちの多くは、釣り竿や魚を入れるクーラーボックスを持っていました。この島は、きっと釣りで有名なのだと思います。また、神社仏閣が数多くあることも特徴のひとつのようです。集落の中心部には大きな神社がありましたし、島を巡る山道沿いには、神様や仏様が八十八か所も祭ってあるそうです。 日本最古の歴史書「古事記」の中に、神様が次々と島を産んでいく物語「国産(くにう)み」の神話があるそうなのですが、沼島も神様が産んだという伝説があるそうです。沼島の観光パンフレットには「太古の昔、神々が創った最初の島、沼島」というキャッチフレーズがあります。今回は、時間の関係で神様関連の名所をまわることはできませんでしたが、沼島には伝説や神話が数多く残っているそうです。 わたしは、沼島を紀伊水道の方へ歩いて横断しました。島の反対側は切り立った崖ですが、遊歩道が整備されて、磯までおりることができます。磯にはたくさんの岩がゴロゴロとしていますが、そのなかでひときわ大きな岩が「上立神岩(かみたてがみいわ)」と呼ばれる神様の岩です。細長い岩が海面から突き出ていて、高さは約30メートルもあります。磯には何人かの釣り人がいて、釣りをしていました。 |
| 諭鶴羽山。 (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます) |