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【5】海が裂けた!鳴門うず潮の力に圧倒
淡路島総力特集
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うず潮見学に出発! (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます)

 淡路島最大の観光スポット“渦潮(うずしお)”を見に行きました。鳴門海峡の潮の満ち引きのタイミングに合うように自転車のペダルを回し、当初の狙い通り、海が裂けるような巨大な海流とうず潮を目の当たりにすることができました。淡路島の福良港(ふくらこう)から出航する観光船に乗ってうず潮を間近で見れたときは、あまりの雄大さに感動しました。うず潮見たさの勢いもあって、この日の走行距離は今回の淡路島ツーリング期間中最長の85キロメートルに達しました。

紀伊水道沿いに走る地方道76号線で鳴門海峡を目指す。

 淡路島と四国の間にある鳴門海峡のうず潮は、いつも渦を巻いているわけではありません。潮汐(ちょうせき)という潮の満ち引きの力によって引き起こされるため、基本的には満ち潮のときと引き潮のときの1日に2回だけ渦が発生します。干満のそれぞれ1回あたり1時間半−2時間ほどの短い時間内でしか大きなうず潮は見られません。

 潮汐は毎日起こる現象ですが、日によって“満ち引きの差”に違いがあります。満ち引きの差が大きければ大きいほどうず潮は大きくなります。満ち引きの差が最も大きい潮汐を「大潮(おおしお)」と呼び、中くらいのときを「中潮(なかしお)」、小さいときを「小潮(こしお)」と呼ぶそうです。大潮は1か月に2回ほどあり、1回あたりの大潮は1週間前後続きますので、1か月の間で、大きなうず潮が見られるのは通算でおおよそ2週間だけということになります。

 残念ながら、今回の自転車ツーリングの期間は、大潮の期間とは重ならなかったため、わたしは中潮のタイミングでうず潮を見に行きました。

 潮汐の時間は日によってまったく異なります。早朝に潮汐があるときもあれば、日没後に潮汐があるときもあります。この日は満ち潮が朝8時50分、引き潮が15時00分でしたので、わたしは午後の引き潮のタイミングを狙って自転車のペダルを回すことにしました。

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今回の活動地域を示した図です。クリックすると拡大します。
走行ルート全体を示した図です。この日の走行距離は今回の淡路島ツーリングの中で最長の85キロメートルに達しました。赤線は自転車での走行ルートを示し、黄緑色はうず潮を観光する観潮船での移動ルートを示しています。
走行ルートの詳細図です。平坦な道が紀伊水道沿いに伸びる地方道76号線が印象的でした。
洲本市を後にして峠道を上っている途中に、3階建てのビルほどもある大きな廃墟がありました。土台はコンクリートでつくられ、上部構造は金属でできているようです。すっかり草に覆われて、金属部分は錆びていました。巨大ロボットのようです。
峠をいくつも越える。 (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます)
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巨大ロボットのような廃墟は、第3次世界大戦後、人類滅亡寸前の世界を描いた人気テレビアニメ「未来少年コナン」の1シーンようです。
走行ルート全体の標高差を示した図です。地形測定ソフトのカシミール3Dを使って制作しました。
淡路島三大名山のひとつ柏原山から連なる尾根を越える峠の中腹にて。柏原山山頂へ続く林道の入口がありました。
峠の中腹から和歌山県の方向を展望しました。
峠を越えて海沿いの道まで出る。

 朝8時に五色町(※)のお宿を出発したわたしは、まず紀伊水道側にある洲本市まで行き、そこから海沿いに走る地方道76号線を通って、うず潮を観光する観潮船が出航する福良港に行くことにしました。播磨灘に面した五色浜沿いに福良港を目指せば、もっと近いのですが、それでは時間よりも早く着いてしますので、少し遠回りをすることにしました。

 ※五色町は2006年2月11日に隣町の洲本(すもと)市と合併して洲本市になりますが、今回のツーリングでは合併前であるため「五色町」の表記を使います。

 五色町から洲本市を経由して福良港まで行く距離は、およそ60キロメートルあります。平均速度10キロメートルで進めば14時00分に福良港に着き、15時00分の引き潮に間に合います。ただ、わたしのこれまでのツーリングの平均速度は時速8キロメートル前後が大半を占めているため、今回は過去の平均実績よりも2キロメートルほど上乗せしないとうず潮に間に合いません。

 淡路島は高い山は少ないですが、ちょっとした起伏は至るところにあります。五色町から出発して最初の起伏は、洲本市との境界線に当たる標高250メートル級の峠です。そのあと淡路島三大名山のひとつ柏原山(かしわばらさん)から連なる尾根を越える標高150メートル級の峠。さらに福良港に至るまでに100メートル級の峠が2つあり、これら峠の標高差を足し合わせると約600メートルにもなります。平坦な道を約60キロメートル走るのと比べて、負担がかなり大きくなります。

 幸いこの日は快晴で気温も最適、風もほとんどなく、自転車ツーリングには最高の条件が揃っていましたので、わたしはうず潮を見るという明確な目標に向かって、体力の限界に挑戦する意気込みでペダルを回すことにしました。

 五色町から洲本市までは、勢いと力にまかせて自転車を進め、難なく最初の標高250メートル級の峠をクリアしました。洲本市の中心部に来るとスーパーマーケットのジャスコが巨大な店舗を構えていて、周囲には商店街やコンビニなどがたちならんでいました。洲本市は淡路島最大の街ですが、今回の淡路島ツーリングで洲本市中心部に足を踏み入れたのは今回が初めてです。

洲本から76号線へ。 (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます)

 洲本市の人口は約4万人と、淡路島の中では人口密集度が高いため、わたしはもっと雑然とした街なのかと思っていましたが、とんでもありませんでした。ジャスコを中心に歩道や道路がよく整備され、高級そうな温泉街が軒を連ねています。街はゴミひとつ落ちていないほどきれいで、今度、淡路島をツーリングするときは洲本市に泊まってもいいかなぁと思いました。

地方道76号線にて。写真左の海上にぼんやり見える島は、淡路島の離島・沼島です。

 2006年2月には洲本市と五色町が合併して、新しい洲本市として再スタートします。これにより五色町と一体となった都市整備がさらに進むことが期待されます。

 洲本市街地を後にして、紀伊水道沿いに福良港方面へと続く地方道76号線へ進みました。76号線に入ってすぐのところには、紀伊水道を見渡せる高級ホテルが建っていて、洲本市が淡路島観光の拠点になっていることがよく分かりました。さらに自転車を進めていくと、急な登り坂に差し掛かります。淡路島三大名山のひとつ柏原山から連なる尾根をここで越えなければなりません。

 ◆柏原山から連なる尾根を越える峠道で録音しました。峠を登るのに手こずってしまい、時間が気になり始めていた頃です。「いま、南あわじ市方面へ向かう峠の中腹にいます。きょう、午後2時頃に鳴門海峡でうず潮が見られるとの情報を得たので、うず潮観潮船が出航する福良港に向かっているのですが、峠が予想以上に厳しいので時間までに間に合うかどうか少し心配です」という趣旨を話しています。この段落をクリックすると音声を再生します。(録音時間55秒、ファイル容量432KB、MP3形式)

 ◆颯爽としたロードバイクを駆るアスリートが何人も峠を登っていきました。「この激しい坂道をロードバイクの方々はぐいぐいと速度を上げて進んでいきます。信じられません。同じ自転車でも、わたしの自転車の速度とは全然違います。登り坂であれくらい速度が出せるようになりたいです」という趣旨を話しています。この段落をクリックすると音声を再生します。(録音時間26秒、ファイル容量206KB、MP3形式)

 息を切らしながら峠を越えたあと、下り坂を時速30キロメートルの安全速度を保ちながら駆けおり、そのまま15キロメートルほど続く海沿いの平坦な道へ突き進もうとしたときでした。つづら折りになった坂道を自転車を傾けながら曲がっている途中、道路脇から中年女性と思われる方が、農作業風の服装で手を振りながら飛び出てきました。

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淡路島の離島・沼島(ぬしま)への連絡船が出航する土生港(はぶこう)を過ぎ、再び峠に差し掛かったところから、白く美しい砂浜が見えました。地方道76号線にて。
しばらく白い砂浜を眺めていると、トビが目の前を飛んでいきました。
地方道76号線を振り返って沼島を撮りました。青い海に緑色の沼島が浮かんで見えます。
坂道が急で押して歩きました。後方の海上には沼島が見えます。
観潮船が出航する福良港が見えてきました。天然の湾になっていて、たくさんの船が往来しています。
福良港を望む峠で撮りました。
ナゾのパラダイス。 (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます)
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福良港の観潮船の発着場にて。わたしの後ろに海に突き出た桟橋が見えます。船を待つ間、ソフトクリームをいただきました。おいしい♪
わたしが乗る観潮船・咸臨丸(かんりんまる)が福良港の桟橋に接岸しました。高いマストなど帆船のような部分はレプリカです。
咸臨丸に乗船したところです。いよいようず潮を見に出港します。高いマストが立派です。
福良港の出口付近の無人島には、神様が祀ってありました。
港を出てしばらくすると遠くに大鳴門橋が見えてきました。
咸臨丸の乗船券です。初めは大人1人2000円の価格が、高いか安いか分かりませんでしたが、雄大なうず潮を目の当たりにするとお得感がふつふつと湧いてきました。

 わたしは何か事故があり、助けを求めているのか思って、大きく動揺してしまいました。ブレーキをかけながら周囲を観察してみると大きな字で「淡路島ナゾのパラダイス」と書いてあるのが目にとまりました。その瞬間、「あぁ、客寄せしてるんだ!」と分かると同時に、わたしの後ろを追走する専属カメラマン(専カメ)の「運転に集中しろ!」という、失速してバランスを崩しているわたしを叱る怒鳴り声が聞こえてきました。ふと我に返ったわたしはブレーキレバーから手を放して、再び速度をあげて無事に坂を下りきりました。

 あとからインターネットで調べてみたところ、「淡路島ナゾのパラダイス」は、大人向けのアトラクションのひとつだということが分かりました。下ネタも豊富に展示してあるとのことで、子供連れや付き合い始めたばかりのカップルで行くのは、少し刺激が強すぎるような印象を受けました。わたし的には、農作業風の女性が手を振りながら近寄ってくるのは、交通事故の原因にもなるので、できれば、地元きってのハンサムな男の子に手を振って欲しかったと思っています(苦笑)。

 海沿いの平坦な道は、ほんとうにどこまでもまっすぐ続くかのようでした。内陸部では風が吹いていない日だったのですが、海沿いの道では海風が吹き付けています。風は体全体を押さえつけるように吹き、巡航速度が思うように出せません。いくらペダルを回しても時速18キロメートルほどしか出せず、うず潮に間に合うかどうか、だんだん焦りが増してきました。

 ◆紀伊水道に面した地方道76号線上で録音しました。時間が迫っているのになかなか巡航速度が上がらないため焦りが滲み出ています。「きょうは雲ひとつない快晴でうず潮日和です。うず潮が発生する時間までに到着して、早くうず潮が見たいです」という趣旨を話しています。この段落をクリックすると音声を再生します。(録音時間15秒、ファイル容量124KB、MP3形式)

 休憩もそこそこにペダルを回し、標高100メートル級の峠を2つ越え、やっとの思いで福良港にやってきました。福良港に着いたのは14時30分。急いでうず潮を観光する観潮船の乗船券を購入しました。この日は中潮ですが、休日と重なっていたためたくさんの人で賑わっていました。福良港からは観潮船を運行する会社が何社かあるようですが、わたしは排水量約380トンと観潮船の中で最大級の船を運航するジョイポート南淡路(株)の船に乗ることにしました。

 乗船券の値段は大人1人2000円と、とても高いですが、排水量約380トンの巨大な観潮船を維持するためにコストがかかるのだろうと思い、料金を支払いました。この船は、単に大きいだけではなく、戦前の蒸気帆船(じょうきはんせん)の装飾が施してあります。高いマストが何本も空に向かって伸びていて、実際の排水量よりも大きく見えます。

うず潮を見た! (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます)

 ジョイポート南淡路では、2隻の蒸気帆船の装飾を施した船を運航しており、1隻は1857年、江戸幕府がオランダに発注して建造した咸臨丸(かんりんまる)の装飾が施され、もう1隻は1930年、神戸で建造された日本丸(にほんまる)の装飾が施されています。わたしは咸臨丸に乗せてもらいました。

直前までベタ凪(な)ぎだった海が、突如として裂け、大きな海流が渦巻いています。こんなに海流の早いところに橋脚を立てて、1600メートルあまりの長大な橋をかけるなんて、すばらしい技術力だと思います。

 この日の海は、波がまったくない凪(な)ぎの状態でした。船に乗って鳴門海峡方面へ出て行く途中、「ほんとうにうず潮が起こっているのかな?」と、あまりの波のなさに心細く思うほどでした。船がゆっくりと淡路島と四国を結ぶ大鳴門橋の方まで進んで行くと、にわかに海面が波立ってきました。うず潮です!

 うず潮を見る前、わたしは、うず潮の“渦”だけが、いくつか個別に渦巻いている状態を想像していましたが、実際のうず潮は、もっとスケールの大きいものでした。

 うず潮は、満ち潮と引き潮の差が激しい日に起こる現象で、具体的には瀬戸内海と外海に通じる紀伊水道の干満の差によって引き起こされます。満ち潮のときは紀伊水道から瀬戸内海に大量の海水が流れ込み、引き潮のときは逆に瀬戸内海から紀伊水道への海流が発生します。このとき鳴門海峡は雄大な川のように、海水が流れ、ところどころに渦が発生します。

 海流によって引き起こされる渦も迫力がありますが、海峡全体の海水が大河のように流れる風景は圧巻です。海峡における潮の流れは、最速で時速30キロメートルにも達するそうです。これだけ潮の流れが速いと、小さな船では流れに逆らって進むことは困難です。仮に流れに従って進めば、何もしなくても時速30キロメートルの猛スピードで海峡を進んでいくことになります。

 わたしは咸臨丸が海流に流されて、どこかの岩に座礁してしまうのではないかと心配しましたが、さすがはプロの操舵手だけあって、みごとな操縦でした。海流に逆らわず、かつ流されることもなく、最適な距離でうず潮を見せてくれ、わたしは大満足でした。

 帰りは、ゆっくりペダルを回して、日没前には五色町のお宿に到着しました。

 ◆次回は、いよいよ淡路島ツーリング最終日のレポート「【エピローグ】さよなら淡路、また来るね」です。活動拠点にしていた五色町を離れ、岩屋港から船に乗って淡路島を後にしました。この段落をクリックするとリンクします。

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鳴門海峡はもう目の前なのに、波ひとつ立っていないベタ凪ぎの状態です。ほんとうにうず潮は見られるのでしょうか?!
海峡に近づくと海流が早くなり、まるで大河のように流れています。
海峡の至るところにうず潮が起こっています。この渦に飲み込まれたらひとたまりもありません。
スケールの大きい雄大なうず潮を思う存分見られて大満足です。
福良港に戻る途中に、もう1隻の観潮船・日本丸が鳴門海峡に向けて航行していきました。
うず潮を見たあと、お腹が減ったので、菓子パンと淡路島牛乳をいただきました。わたしの後ろには漁師さんの石像がありました。


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