| うず潮見学に出発! (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます) |
|
淡路島最大の観光スポット“渦潮(うずしお)”を見に行きました。鳴門海峡の潮の満ち引きのタイミングに合うように自転車のペダルを回し、当初の狙い通り、海が裂けるような巨大な海流とうず潮を目の当たりにすることができました。淡路島の福良港(ふくらこう)から出航する観光船に乗ってうず潮を間近で見れたときは、あまりの雄大さに感動しました。うず潮見たさの勢いもあって、この日の走行距離は今回の淡路島ツーリング期間中最長の85キロメートルに達しました。
淡路島と四国の間にある鳴門海峡のうず潮は、いつも渦を巻いているわけではありません。潮汐(ちょうせき)という潮の満ち引きの力によって引き起こされるため、基本的には満ち潮のときと引き潮のときの1日に2回だけ渦が発生します。干満のそれぞれ1回あたり1時間半−2時間ほどの短い時間内でしか大きなうず潮は見られません。 潮汐は毎日起こる現象ですが、日によって“満ち引きの差”に違いがあります。満ち引きの差が大きければ大きいほどうず潮は大きくなります。満ち引きの差が最も大きい潮汐を「大潮(おおしお)」と呼び、中くらいのときを「中潮(なかしお)」、小さいときを「小潮(こしお)」と呼ぶそうです。大潮は1か月に2回ほどあり、1回あたりの大潮は1週間前後続きますので、1か月の間で、大きなうず潮が見られるのは通算でおおよそ2週間だけということになります。 残念ながら、今回の自転車ツーリングの期間は、大潮の期間とは重ならなかったため、わたしは中潮のタイミングでうず潮を見に行きました。 潮汐の時間は日によってまったく異なります。早朝に潮汐があるときもあれば、日没後に潮汐があるときもあります。この日は満ち潮が朝8時50分、引き潮が15時00分でしたので、わたしは午後の引き潮のタイミングを狙って自転車のペダルを回すことにしました。 | クリックすると拡大します。 |
| 峠をいくつも越える。 (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます) |
| クリックすると拡大します。 |
朝8時に五色町(※)のお宿を出発したわたしは、まず紀伊水道側にある洲本市まで行き、そこから海沿いに走る地方道76号線を通って、うず潮を観光する観潮船が出航する福良港に行くことにしました。播磨灘に面した五色浜沿いに福良港を目指せば、もっと近いのですが、それでは時間よりも早く着いてしますので、少し遠回りをすることにしました。 ※五色町は2006年2月11日に隣町の洲本(すもと)市と合併して洲本市になりますが、今回のツーリングでは合併前であるため「五色町」の表記を使います。 五色町から洲本市を経由して福良港まで行く距離は、およそ60キロメートルあります。平均速度10キロメートルで進めば14時00分に福良港に着き、15時00分の引き潮に間に合います。ただ、わたしのこれまでのツーリングの平均速度は時速8キロメートル前後が大半を占めているため、今回は過去の平均実績よりも2キロメートルほど上乗せしないとうず潮に間に合いません。 淡路島は高い山は少ないですが、ちょっとした起伏は至るところにあります。五色町から出発して最初の起伏は、洲本市との境界線に当たる標高250メートル級の峠です。そのあと淡路島三大名山のひとつ柏原山(かしわばらさん)から連なる尾根を越える標高150メートル級の峠。さらに福良港に至るまでに100メートル級の峠が2つあり、これら峠の標高差を足し合わせると約600メートルにもなります。平坦な道を約60キロメートル走るのと比べて、負担がかなり大きくなります。 幸いこの日は快晴で気温も最適、風もほとんどなく、自転車ツーリングには最高の条件が揃っていましたので、わたしはうず潮を見るという明確な目標に向かって、体力の限界に挑戦する意気込みでペダルを回すことにしました。 五色町から洲本市までは、勢いと力にまかせて自転車を進め、難なく最初の標高250メートル級の峠をクリアしました。洲本市の中心部に来るとスーパーマーケットのジャスコが巨大な店舗を構えていて、周囲には商店街やコンビニなどがたちならんでいました。洲本市は淡路島最大の街ですが、今回の淡路島ツーリングで洲本市中心部に足を踏み入れたのは今回が初めてです。 |
| 洲本から76号線へ。 (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます) |
|
洲本市の人口は約4万人と、淡路島の中では人口密集度が高いため、わたしはもっと雑然とした街なのかと思っていましたが、とんでもありませんでした。ジャスコを中心に歩道や道路がよく整備され、高級そうな温泉街が軒を連ねています。街はゴミひとつ落ちていないほどきれいで、今度、淡路島をツーリングするときは洲本市に泊まってもいいかなぁと思いました。
2006年2月には洲本市と五色町が合併して、新しい洲本市として再スタートします。これにより五色町と一体となった都市整備がさらに進むことが期待されます。 洲本市街地を後にして、紀伊水道沿いに福良港方面へと続く地方道76号線へ進みました。76号線に入ってすぐのところには、紀伊水道を見渡せる高級ホテルが建っていて、洲本市が淡路島観光の拠点になっていることがよく分かりました。さらに自転車を進めていくと、急な登り坂に差し掛かります。淡路島三大名山のひとつ柏原山から連なる尾根をここで越えなければなりません。 息を切らしながら峠を越えたあと、下り坂を時速30キロメートルの安全速度を保ちながら駆けおり、そのまま15キロメートルほど続く海沿いの平坦な道へ突き進もうとしたときでした。つづら折りになった坂道を自転車を傾けながら曲がっている途中、道路脇から中年女性と思われる方が、農作業風の服装で手を振りながら飛び出てきました。 | クリックすると拡大します。 |
| ナゾのパラダイス。 (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます) |
| クリックすると拡大します。 |
わたしは何か事故があり、助けを求めているのか思って、大きく動揺してしまいました。ブレーキをかけながら周囲を観察してみると大きな字で「淡路島ナゾのパラダイス」と書いてあるのが目にとまりました。その瞬間、「あぁ、客寄せしてるんだ!」と分かると同時に、わたしの後ろを追走する専属カメラマン(専カメ)の「運転に集中しろ!」という、失速してバランスを崩しているわたしを叱る怒鳴り声が聞こえてきました。ふと我に返ったわたしはブレーキレバーから手を放して、再び速度をあげて無事に坂を下りきりました。 あとからインターネットで調べてみたところ、「淡路島ナゾのパラダイス」は、大人向けのアトラクションのひとつだということが分かりました。下ネタも豊富に展示してあるとのことで、子供連れや付き合い始めたばかりのカップルで行くのは、少し刺激が強すぎるような印象を受けました。わたし的には、農作業風の女性が手を振りながら近寄ってくるのは、交通事故の原因にもなるので、できれば、地元きってのハンサムな男の子に手を振って欲しかったと思っています(苦笑)。 海沿いの平坦な道は、ほんとうにどこまでもまっすぐ続くかのようでした。内陸部では風が吹いていない日だったのですが、海沿いの道では海風が吹き付けています。風は体全体を押さえつけるように吹き、巡航速度が思うように出せません。いくらペダルを回しても時速18キロメートルほどしか出せず、うず潮に間に合うかどうか、だんだん焦りが増してきました。 休憩もそこそこにペダルを回し、標高100メートル級の峠を2つ越え、やっとの思いで福良港にやってきました。福良港に着いたのは14時30分。急いでうず潮を観光する観潮船の乗船券を購入しました。この日は中潮ですが、休日と重なっていたためたくさんの人で賑わっていました。福良港からは観潮船を運行する会社が何社かあるようですが、わたしは排水量約380トンと観潮船の中で最大級の船を運航するジョイポート南淡路(株)の船に乗ることにしました。 乗船券の値段は大人1人2000円と、とても高いですが、排水量約380トンの巨大な観潮船を維持するためにコストがかかるのだろうと思い、料金を支払いました。この船は、単に大きいだけではなく、戦前の蒸気帆船(じょうきはんせん)の装飾が施してあります。高いマストが何本も空に向かって伸びていて、実際の排水量よりも大きく見えます。 |
| うず潮を見た! (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます) |
|
ジョイポート南淡路では、2隻の蒸気帆船の装飾を施した船を運航しており、1隻は1857年、江戸幕府がオランダに発注して建造した咸臨丸(かんりんまる)の装飾が施され、もう1隻は1930年、神戸で建造された日本丸(にほんまる)の装飾が施されています。わたしは咸臨丸に乗せてもらいました。
この日の海は、波がまったくない凪(な)ぎの状態でした。船に乗って鳴門海峡方面へ出て行く途中、「ほんとうにうず潮が起こっているのかな?」と、あまりの波のなさに心細く思うほどでした。船がゆっくりと淡路島と四国を結ぶ大鳴門橋の方まで進んで行くと、にわかに海面が波立ってきました。うず潮です! うず潮を見る前、わたしは、うず潮の“渦”だけが、いくつか個別に渦巻いている状態を想像していましたが、実際のうず潮は、もっとスケールの大きいものでした。 うず潮は、満ち潮と引き潮の差が激しい日に起こる現象で、具体的には瀬戸内海と外海に通じる紀伊水道の干満の差によって引き起こされます。満ち潮のときは紀伊水道から瀬戸内海に大量の海水が流れ込み、引き潮のときは逆に瀬戸内海から紀伊水道への海流が発生します。このとき鳴門海峡は雄大な川のように、海水が流れ、ところどころに渦が発生します。 海流によって引き起こされる渦も迫力がありますが、海峡全体の海水が大河のように流れる風景は圧巻です。海峡における潮の流れは、最速で時速30キロメートルにも達するそうです。これだけ潮の流れが速いと、小さな船では流れに逆らって進むことは困難です。仮に流れに従って進めば、何もしなくても時速30キロメートルの猛スピードで海峡を進んでいくことになります。 わたしは咸臨丸が海流に流されて、どこかの岩に座礁してしまうのではないかと心配しましたが、さすがはプロの操舵手だけあって、みごとな操縦でした。海流に逆らわず、かつ流されることもなく、最適な距離でうず潮を見せてくれ、わたしは大満足でした。 帰りは、ゆっくりペダルを回して、日没前には五色町のお宿に到着しました。 | クリックすると拡大します。 |