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房総半島の先端部・洲崎をぐるりと回る
2007年夏休み、行くなら館山特集【1】
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初めての房総半島 (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます)

 千葉・房総半島ツーリングでは、まず館山市から西に延びた岬「洲崎(すのさき)」をぐるりと回りました。先端部には平安時代(794−1185年)中期の書物に記録が残るという由緒ある神社「洲崎神社」が祭ってあります。岬の南側に自転車を進めると太平洋がどこまでも広がっていました。

新宿駅から特急さざなみ号に乗って館山駅までやってきました。クリックすると拡大します。

 東京から館山までの距離は約130キロメートル。特急列車に乗れば2時間ほどで着く手軽さなのですが、わたしはこれまで一度も足を運んだことがありませんでした。南総方面に行く特急列車が通常、東京駅から発着するため、東京西部に活動拠点があるわたしにとって利用しにくかったというのが主な理由です。

 そんなある日、時刻表を眺めていると館山行きの特急列車「さざなみ号」が、週末や休日などに限定して新宿駅から発着することを発見。「これは行くしかない」と考え、自転車を袋に詰めて出かけることにしました。初めての房総半島の自転車ツーリングの始まりです。

 新宿駅から朝いちばんに出る「さざなみ号」に乗って10時頃に館山に着きました。朝早かったこともあり、列車の中で朝ご飯をいただきました。近郊都市の木更津駅まではけっこう飛ばしていくのですが、南総に入ると速度を落とします。単線区間が多くなるためだと思いますが、その分、美しい景色をゆっくり味わえます。

 今回の旅行では館山市内の民宿にお宿を借り、ここを起点に沿岸や山間部へ出かけました。館山駅前で自転車を組み立てたあと、まずは予約をしてある民宿「喜代ふじ旅館(きよふじりょかん)」に向かいました。全旅程2泊3日分の重い荷物をお宿で預かってもらうためです。

クリックすると拡大します。
今回の活動エリアを示した図です。東京中心部から館山駅までの距離は約130キロメートル。特急列車に乗って2時間ほどで着きます。クリックすると拡大します。
館山駅からの走行ルートを示した地図です。海上自衛隊・館山航空基地の南側から地方道257号線に入り、洲崎をぐるりと回りました。クリックすると拡大します。
全行程約30キロメートルの標高差を示した図です。地形測定ソフトのカシミール3Dで制作しました。
特急さざなみ号の車内にて。新宿駅で買った駅弁「オーベントーシリーズ」(日本レストランエンタプライズ製)をいただきました。全国的にも珍しい“暖かい”駅弁。JR東日本の営業エリア内限定の販売です。
喜代ふじ旅館 (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます)
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館山駅前にて。併設の観光案内所の職員の方々が、鉢植えについた虫を熱心に取り除いていました。殺虫剤を使わずに、割り箸で1匹ずつつまんでいたのが印象的でした。
予約しておいた喜代ふじ旅館の部屋にて。座卓にはお茶セットと栗まんじゅうが置いてありました。さっそくいただきました。
栗まんじゅう、むっちゃおいしい! 湿ったおしぼりまで揃っています。
栗まんじゅうは渋いお茶と純和風の部屋によく合います。障子の向こうに植えてある木の影が、和風の雰囲気を醸し出しています。

 ◆喜代ふじ旅館は、駅から数百メートルのところにあります。自転車だと10分もかかりません。外観を一見すると普通の民家のようですが、奥行きがあって純和風の部屋がいくつもあり、意外に大きな建物です。案内された畳の部屋には座卓があり、お茶セットと和菓子が置いてありました。掃除が行き届き、これまでわたしが泊まってきたどの民宿よりもきれいです。

喜代ふじ旅館の玄関にて。純和風のお宿です。庭の手入れが行き届いています。

 旅行の楽しさの3分の1は宿泊先にあると思います。質素な設備でも手入れが行き届いていれば好感が持てますし、健康的でおいしい料理をふるまってもらえれば満足度は一気に高まります。さらに宿泊料金がお値打ちなら文句の付けどころもありません。喜代ふじ旅館はこうしたポイントをすべてクリアしていて、わたしのなかでは「ぜひおすすめしたい民宿」リストの上位にランクインしました。

 ちなみに残りの3分の2は、行き先と同伴者。わたしは座卓にあったおいしい栗まんじゅうをぺろり平らげたあと、その残りを確かめるべく喜代ふじ旅館を出発しました。本日の行き先は南総の西側、相模灘・伊豆半島方面に細長く伸びた洲崎です。同伴者である専属カメラマン(専カメ)には、わたしの満足度を高めるために水やお菓子、タオルなど半日分の荷物とカメラセットを持たせました。

 洲崎までの走行ルートは、相模灘に突き出た岬をぐるりと取り囲むように走る地方道257号線を使いました。若干クルマの通りが多いのが気になりましたが、この道しかないため仕方ありません。館山港に面した海上自衛隊・館山航空基地の南側から入り、館山湾を右手に見ながら10キロメートルほど進むと洲崎に出ます。

由緒ある洲崎神社 (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます)

 相模灘がよく見える洲崎には小さな漁港と灯台、神社がありました。よく晴れて空気が澄んだ日には、遠く大島や伊豆半島、富士山も見えると思います。

 神社はとても歴史の古いもので、今から1000年ほど前の平安時代中期に編纂された書物に記録が残っているほどです。海を挟んで反対側にある鎌倉と近いこともあり、鎌倉時代(1185−1333年)には武将・源頼朝が戦勝を祈願して田畑や土地を寄進した由緒ある神社だと、館山市教育委員会の案内板に記してありました。

 境内はこんもりとした緑に覆われた山の上の方にあり、長い石段がつくられています。周囲の雑木林の一部は、地元の人の信仰心の高さからこれまで一度も伐採されたことがない自然林だそうです。年輪を重ねた樹木に覆われ、予想以上に薄暗く、神秘的な感じです。日の光が差し込めるところはとても明るいですが、木陰に目をやると深緑色の苔がびっしりと生えています。

 正面には装飾が多い江戸時代中期の特徴を持つ本殿が建てられ、その両脇にはお稲荷様をはじめとする神々の小さな祠がありました。本殿は館山市指定有形文化財で、周囲の自然林は千葉県指定天然記念物として大切に維持・保存されています。

 ◆洲崎神社の境内で録音しました。「きょうは特急電車に乗って館山までやってきました。自転車で海沿いの道を走り、今、房総半島の先端部分に位置する洲崎神社にいます。相模灘がよく見えます」という趣旨を話しています。この段落をクリックすると音声を再生します。(録音時間1分6秒、ファイル容量516KB、MP3形式)

右鳥居を拡大した写真。藁(わら)のお人形のようなものが吊されています。何かの魔よけでしょうか。

 石段を下りてふと振り返ると、入り口付近に設置されている鳥居の梁の部分に、“てるてる坊主”のような形をした藁(わら)人形がヒモで吊されていました。全部で3体並んでいて、頭の部分が垂れているように見えます。なんだか首を吊っているようで、不思議な感じがしました。どんな言われがあわるのかは分かりませんが、きっと何かの魔よけだと思います。

クリックすると拡大します。
地方道257号線を走って須崎神社までやってきました。すぐ近くに灯台もあります。
境内の入り口に自転車を停めました。本殿は写真奥の石段を登ったところにあります。
本殿の前にて。樹木に覆われていますが、木々の隙間から相模灘方面を見通せます。
本殿は装飾の多い江戸時代中期の特徴が残っているそうです。脇には小さな祠が並んでいます。日陰には苔がたくさん生えています。
石段を下りてからよく見ると、鳥居のしめ縄に“てるてる坊主”のようなものがかかっているのに気づきました。左の写真が拡大したものです。
房総フラワーライン (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます)
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洲崎の南側から撮った写真です。正面のこんもりした小山の左側に洲崎神社があります。
海岸沿いに自転車を進めます。
雄大な黒潮の流れる太平洋に出ました。どこまでも広がっています。
ユリカモメが飛んでいます。エサの魚や甲殻類が多く生息していることが伺い知れます。
少し沖には釣り船が波に揺られていました。数人が釣りを楽しみ、近くの岩場には海鳥の群れが羽を休めています。
南国風の高級リゾートホテル。写真左側のトーテンポールのような飾り付けが気になります(笑)
待ちに待った晩ごはんです。いただきまーす!

 洲崎神社をあとにしたわたしは、道なりに岬の南側へ回り込みました。すると風景が一変。これまでは穏やかな内海という印象でしたが、南側は太平洋の荒波が寄せてくる感じへとおもむきが変わりました。

洲崎の南側を走る房総フラワーライン(地方道257号線)にて。太平洋から吹き込む風が強いためか、木々の背がみな低い。この日は風が弱く穏やかでした。

 荒々しい外洋にさらされているとはいえ、黒潮暖流の影響を受けて比較的温暖な気候に恵まれているのが南総の特徴です。花卉(かき)の栽培などの園芸農業が盛んに行われていることから、この区間を走る地方道257号線は「房総フラワーライン」の愛称がつけられています。

 道沿いには南国風にアレンジされた高級リゾートホテルやゴルフ場、テーマパークなどが多数つくられています。温暖な気候ですし、夏は海風が心地よい。都心からもほどよい距離なので、リゾート施設の立地条件としては最高です。釣り客にも人気のようで、海の方を見ると数人の客を乗せた釣り船が波間に揺れていました。ゆりかもめなど海鳥の姿も多く見られたことから、きっとたくさんの魚が生息しているのだと思います。

 帰りは岬を横断する細い林道を使いました。すぐ近くに国道410号線が通っているのですが、大型トラックが地響きを立てて疾走するなど交通量が多すぎて話になりません。1本山手に入るだけで、とても静な道になります。途中、短いトンネルがあり、ここを過ぎるとゆるやかな下り坂になり、そのまま館山市内に戻ることができました。

 洲崎をぐるりと一周した距離は約30キロメートル。午後からの半日ツーリングとしてはちょうどいいです。ほどよい運動でお腹が減ったわたしは、急いでお風呂に入り、本日最大の楽しみである晩ごはんをいただきました。

お魚ザンマイの豪華な晩ごはん。大きな焼き魚にお刺身、たたき、エビの天ぷらなどに大満足です。喜代ふじ旅館を選んでよかった!

 ◆港町であるだけに、初日の料理はお魚ザンマイです。焼き魚にお刺身、たたきと魚料理の豪勢なオンパレード。エビやナスの天ぷらもあり、炊きたてでホクホクのごはん、あつあつのお吸い物といっしょにおいしくいただきました。ほんとうに幸せな1日の締めくくりです。満足しきったわたしはぐっすり眠りました。

 ◆翌日は江戸時代の小説「南総里見八犬伝」の舞台となった豪族・里見氏ゆかりの地に足を伸ばしました。この段落をクリックすると「2007年夏休み、行くなら館山特集」第2回目の「里見八犬伝・八房の生まれ故郷を訪ねる」へリンクします。

(本レポートは2006年秋のツーリング記録を編集したものです)



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