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秩父への尾根道で6つの峠を越える
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吾野駅から出発。 (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます)

 2004年暮れ、埼玉県飯能市から秩父市に続く尾根道を走りました。自転車で秩父を走るのは、今回が初めてです。西武秩父線の吾野(あがの)駅から標高700メートル前後の山々の尾根を結ぶ道「奥武蔵グリーンライン」を通り、西武秩父駅まで元気よく走りました。

山々の峰を結ぶ尾根道「奥武蔵グリーンライン」を元気よく走りました。すばらしい眺望に感動しました。

 よく晴れた日の朝早く、池袋駅から西武秩父線直通の快急列車に乗って吾野駅まで行きました。快急列車は、池袋駅から飯能駅までの都心部は急行並みに速く走り、それ以降の山岳地帯は各駅停車になるという列車です。快急列車よりも速い特急列車「レッドアロー号」があるのですが、吾野駅は山岳地の小さな駅なので特急列車は停まりません。このため吾野駅に停車して、なおかつ速度の速い快急列車に乗りました。

 朝7時36分池袋駅発の快急列車に乗り、1時間11分後の8時47分、吾野駅に到着しました。朝早かったこともあり、池袋駅で食べる予定だった朝食を食べ損ねてしまいました。昼食用のおにぎりや水、お菓子などの食料は持参してましたが、朝食分は駅でいただく予定だったため、持っていません。

 わたしは、「私鉄沿線は開発が進んでいるので、吾野駅でもコンビニやレストランがあるだろう」と勝手に思い込み、快急列車に飛び乗りました。

西武秩父線の吾野駅前にて。

 快急列車は、すいすいと都心部を走り抜け、飯能駅までやってきました。ぽかぽかと暖かい日差しに照らされ、電車のなかで、うつらうつらと居眠りをしました。ふと目を覚ましたら、列車は飯能駅を出発するところでした。飯能駅を出れば吾野駅は各駅停車で5つ目の駅と近く、もう寝ていられません。お腹も減ってきたので、沿線にレストランがないか、窓の外を観察していました。

 飯能駅を出てから、線路の周囲は急に山深い景色に変わりました。カーブが多く列車はキーキーと音を立ててレール擦りながら、ゆっくりと走ります。吾野駅に降り立ったときは、あまりの山深さに唖然としました。駅周辺には、レストランどころかコンビニもありません。唯一、朝から営業している酒屋さんのような個人商店があったので、そこで朝ご飯のカップラーメンを買うことにしました。

 カップラーメンの値段は、都市部のスーパーマーケットの2倍ほどと高く、お湯は1カップあたり10円の料金を請求されましたが、それしかないのでお金を支払いました。都市部では二束三文で売られているカップラーメンも、ここでは高級品です。しかも、お湯の量が足らず、カップラーメンの製造元が指定しているお湯の量の半分くらいしかもらえませんでした。食べてみたら味が濃いカップラーメンでした。

顔振峠に登る途中の美しい眺め。

 京王線や東急線、小田急線などの私鉄沿線は、古くから都市開発が進み、駅周辺はとてもよく整備されていることが多いので、わたしは西武秩父線の沿線も似たようなものだと思いこんでいました。しかし、実際は大きく異なりました。飯能駅以降は、人気のあまりない山村のなかを山岳鉄道がゆっくり走る昔のままの沿線環境が残してありました。

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今回の走行地域を示した図です。クリックすると拡大します。
走行ルート全体を示した図です。
走行ルートを立体的な地図で示しまた。地形測定ソフトのカシミール3Dをもとに制作しました。
顔振峠手前の山腹からの眺め。遥か向こうの山々まで見えました。
顔振峠まで激しい登り坂が続く。
山の斜面には、杉の木や野菜などが植えられていました。
「顔振峠」の名前の由来には、平安時代末から鎌倉時代初期の武将・源義経や従者の弁慶にまつわる話しもあるそうです。
顔振峠にて。
顔振峠からの眺め。
奥武蔵グリーンライン。 (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます)
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ぶな峠に向かう途中の奥武蔵グリーンラインからの眺め。
お気に入りのお菓子を手に。左手に持っているミカン類のお菓子が最近とくに気に入りました。
ぽかぽかとよく日が当たります。でも、このあとすぐに雲が後ろから流れてきました。
ぶな峠の案内板の前にて。
ぶな峠にて−その2−。
急に雲が出てきました。山の天気は変わりやすい。

 少々味の濃いカップラーメンをいただいたあと、わたしは「奥武蔵グリーンライン」を走り始めました。天気はとてもよく、青々とした空が広がっています。奥武蔵グリーンラインは、飯能市街地から秩父市街地を結ぶ国道299号線とほぼ平行して建設されています。

 国道299号線は、湾曲しながらも大型ダンプや大型トレーラーが猛スピードで何台も連なって走れる構造になっているのですが、奥武蔵グリーンラインは細い道と急斜面がところどころにある林道のような造りになっています。場所によっては、軽自動車が擦れ違うこともできないほど道幅が狭く、大型車両はまず通行できません。

 奥武蔵グリーンラインは、山の尾根を通っている道です。連なる山のいちばん高いところを結んで道がつくってあるため、道の両側の視界が開けているところも数多くあります。普通の林道のように、山肌を左右に折れながら登っていくパターンでは、山の片側しか展望できません。尾根道は左右それぞれの景色が見られ、山の斜面を登る林道とはまた違う楽しさがあります。

 ただ、山のこちら側から向こう側へと、稜線を横断するタイプの林道では、長い登り坂の向こうには、必ず長い下り坂があります。ところが、尾根道では、いくつもの山の頂上を結んでつくってあるため、細かな起伏が数多く連なっています。つまり、登ったと思ったらすぐに下り、下りきったと思ったらまた登り坂になり…と、気力と体力を消耗しがちです。

吾野駅から西武秩父駅までの走行ルートの標高差を図形化しました。地形測定ソフトのカシミール3Dを使いました。

 この日、わたしが走った区間には、顔振峠(かあぶりとうげ)、傘杉峠、飯盛峠、ぶな峠、刈場坂峠、大野峠の6つの峠があります。峠の前後には、多くのこまごまとした起伏が続いており、登って、下りてという動作を繰り返しました。

 あとから地形測定ソフトのカシミール3Dで調べてみると、細かな起伏が連続しながら、吾野駅から秩父駅方面へ向けて、徐々に標高を上げていることが分かりました。

 吾野駅からいちばん近い顔振峠の標高が約500メートルなのに対して、ぶな峠は同800メートル弱、大野峠は同850メートルほどあります。顔振峠から徐々に高度を上げて、大野峠まで約350メートルも登ったことになります。このように山深い地区だけあり、お昼を過ぎたあたりから徐々に雲が多くなってきました。

顔振峠、刈場坂峠。 (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます)

 ◆尾根道から雲が見え始めたときに録音しました。「秩父にやってきました。奥武蔵グリーンラインを走っているのですが、お昼を過ぎたあたりから、たくさんの雲が流れてきました。山の天気は変わりやすい」という趣旨を話しています。この段落をクリックすると音声を再生します。(録音時間19秒、ファイル容量149KB、MP3形式)

 ◆ぶな峠まで走った地点で録音しました。「奥武蔵グリーンラインには、たくさんの峠があります。西武秩父線・吾野駅から尾根沿いの道を顔振峠、傘杉峠、飯盛峠、ぶな峠と進んできました。雲が出てきて、日が陰り始めたため温度が下がり始めました。これから刈場坂峠、大野峠と進んでいく予定です」(「かぶり」と話していますが正確には「かあぶり」です。訂正します)という趣旨を話しています。この段落をクリックすると音声を再生します。(録音時間43秒、ファイル容量338KB、MP3形式)

 奥武蔵グリーンラインでは、至るところで素晴らしい展望スポットがあります。この展望を楽しむために、都内各地から観光客がマイカーでたくさん乗り入れているのかと思いましたが、マイカーの交通量は意外なほど少ないものでした。奥武蔵グリーンラインは、マイカー通行止めではないので、たまにスピード狂のマイカーが猛烈な速度で走り抜けていくことはあったものの、その他のドライバーは安全速度でゆっくり走っていました。

 マイカーの交通量が比較的少ない背景には、すぐ近くを国道299号線が平行して走っているのに加え、奥武蔵グリーンラインよりも先へ進んだところに、観光地で有名な秩父市や長瀞町があるため、その手前で寄り道する必要がない。道幅が狭くマイカーにとって走りにくいなどの理由が考えられます。マイカーが少ないことは、自転車ライダーにとってはとてもいい条件だと思います。

 今回、奥武蔵グリーンラインでは6つの峠を越えましたが、そのなかでとりわけ美しい展望が楽しめたのは、顔振峠(かあぶりとうげ)と刈場坂峠(標高818メートル)です。顔振峠は、吾野駅方面の展望が楽しめ、刈場坂峠は都幾川村(2006年2月1日に合併して「ときがわ町」の予定)の山林や町並みがよく見えました。上空には、近くの山の斜面から飛び立ったと思われるパラグライダーの姿も見えました。

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標高818メートルの刈場坂峠に着きました。持参したご飯のおにぎりをいただきました。
刈場坂峠から都幾川村(2006年2月1日に合併して「ときがわ町」の予定)方面の眺望。写真右手から低い雲が流れてきました。
刈場坂峠の風景。峠にはクルマ数台が停められる駐車場とお茶屋さんがありました。暖かいお茶や地元名産のお菓子などを販売していました。
刈場坂峠の風景−その2−
刈場坂峠をあとにして、秩父駅方面へ自転車を進めました。
峠の茶屋。 (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます)
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大野峠から秩父市街地へと下る途中の風景です。寒そうな低い雲がどんどん迫っています。
秩父市街地へと続く林道にて。
秩父市街地へ着いたところです。写真奥の尖った山は、セメントの材料になる石灰岩の採掘場として有名な武甲山です。気温は急に下がり、とても寒くなりました。
武甲山とわたし。雲がすっかり空を覆ってしまいました。
池袋駅行きの特急列車「レッドアロー号」に乗り込む。
レッドアロー号の車内はゆったりとしてとても快適です。
西武秩父駅で買った暖かいお茶とおにぎりをいただきました。

 顔振峠、刈場坂峠など美しい景色を楽しめる峠には、ちょっとした駐車場があり、お茶屋さんが暖かいお茶や、地元名産のお菓子などを販売していました。何人かのマイカーのドライバーやオートバイのライダーの方々が休憩していました。わたしは、展望が楽しめる場所に座って、持参してきたおにぎりをいただきました。おいしいおにぎりを食べて大満足です。朝ご飯として食べてしまわなくてよかったと思いました。

 このあと、大野峠を越え、丸山(標高960メートル)の山頂付近から10キロメートルほど離れた秩父駅方面へ下りました。丸山山頂付近の標高は900メートル弱あり、秩父駅の同約250メートルとの標高差は650メートルほどあります。この10キロメートルほどの区間は、ほぼ一貫した下り坂が続いてとても快適です。長い下り坂が続くためスピードが出すぎないように注意する必要があります。

 秩父駅近くに下りてきたとき、わたしは大型ダンプの多さに驚きました。秩父はセメントの採掘場として発展してきた側面もあり、このセメント関連の土砂を運搬する大型車両が地響きを立てながら走り回っています。街中の道幅はとても狭く、大型ダンプの通行で、路面はボコボコに荒れて、粉塵が巻き上がっているところも一部に見られました。

 わたしは、できるだけ大型ダンプが多い表通りを避けて、裏通りづたいに西武秩父駅まで自転車を進めました。セメントに使う石灰岩の採掘場として有名な武甲山が秩父市街地からよく見えました。採掘により山肌が大きく削り取られ、山の白いはらわたが風雨にさらされているように見えました。形が変わった武甲山は、秩父のセメント産業発展の象徴として位置づけられているそうです。

 ◆帰りの電車のなかで録音しました。「いま、西武鉄道の特急レットアロー号に乗っています。きょう、たくさんの峠を越えてましたが、このなかで印象の残っているのは顔振峠です。この峠に着いたのが雲の出る前の午前中ということもあり、すばらしい景色を見ることができました」という趣旨を話しています。この段落をクリックすると音声を再生します。(録音時間45秒、ファイル容量352KB、MP3形式)

 ◆特急列車に乗った感想を録音しました。「レットアロー号は、秩父駅から池袋駅まで、ほとんど停車せずに走ります。とても快適です。今度は、この特急に乗って池袋駅から秩父駅のもっと向こうにある長瀞駅(ながとろえき)ぐらいまで行きたいと思います」という趣旨を話しています。この段落をクリックすると音声を再生します。(録音時間24秒、ファイル容量187KB、MP3形式)

 今回、初めて埼玉県・秩父地区の山林を自転車で走りました。秩父地区はとても山深く、奥武蔵グリーンラインは、そのほんの入口に過ぎません。その先には、豊かな緑や水をたたえる森林が広がっているはずです。暖かくなったら、秩父周辺にお宿を借りて、さらに一歩踏み込んだ自転車ツーリングを楽しみたいと思いました。



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