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首地蔵と甲府市街地を一望できる太良峠
2006年夏休み、行くなら山梨特集【2】
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盆地の気候。 (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます)

 山梨特集の第2日目は、甲府市街地を一望できる標高1120メートルの太良峠(たらとうげ)に登りました。1100メートル超の大きな峠ですが、出発地点の石和温泉そのものの標高がすでに300メートル近くあるため、実質登ったのは800メートルほどです。途中、地元出身で戦前の財閥を立ち上げた実業家・根津嘉一郎さんの銅像や、首だけの地蔵が大きな岩の上に置いてある「首地蔵」を見かけました。

太良峠に登る途中の集落で一休みさせていただきました。

 甲府周辺の気候は東京都心とは大きく異なります。わたしの滞在中、天気予報はほぼ連日のように雨の予報を出していましたが、局地的な降水にとどまり、晴れる地域が多かったように思いました。太良峠に行ったこの日も予報は雨でしたが、空は晴れわたり、太陽の光がさんさんと降りそそいでいました。

 お宿の方に聞いたところ、「高い山々に囲まれた盆地であることが影響しているのではないか」ということでした。暖かく湿った空気が山の斜面に当たって上昇すると、上空にある冷たい空気に冷やされて雨が降ります。四方に山があるため、雨雲が盆地に入り込みにくい状況にあるのかも知れません。

 しかし、天気予報で「雨が降る」と言っているため、むやみに遠くへ行くのは危険です。まずは様子見で笛吹川(ふえふきがわ)サイクリングロード(CR)を上流方面に向かって走り、大丈夫そうならさらに山手の方へ進む計画を立てました。

 笛吹川CRは石和温泉のすぐ近くを流れる笛吹川沿いに敷設された全長約23キロメートルの長大なCRです。下流方面は釜無川(かまなしがわ)と合流する三郡橋まで続き、上流方面は山梨市の万力公園まで続いています。

クリックすると拡大します。
今回の活動エリアを示した図です。甲府盆地の北側に位置する峠に登りました。クリックすると拡大します。
走行ルート全体を示した図です。赤と黄色の点線部分は笛吹川CRの一部を利用した区間です。
走行ルート全体を立体的に示した地図です。地形測定ソフトのカシミール3Dをもとに制作しました。
走行ルート全体の標高差を示した図です。カシミール3Dを使って制作しました。
大理石の巨塔。 (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます)
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笛吹川CRの上流側の終点に万力公園があります。公園の南端には根津財閥の創始者の根津嘉一郎さんの大きな銅像がありました。地元出身の有力実業家として高く評価されているようです。
根津嘉一郎さんの功績を記した案内板です。鉄道事業などで成功したのちは教育や文化活動にも力を入れ、古美術品に関しては国内有数の収集家だったそうです。
銅像の周囲には水を張った堀がつくられていました。大きな鯉や白鳥が悠々と泳いでいました。堀や芝生の維持は手間のかかる作業ですが、とてもよく整備されていました。

 都内の代表的なCRの多摩川や荒川の各CRと同じようによく整備された笛吹川CRをしばらく走るとJR中央線の鉄橋がありました。鉄橋をくぐるとすぐに万力公園があり、中に入ってみると12メートルもある白い大きな大理石の塔の上に、男性の立ち姿の銅像が現れました。

実業家・根津嘉一郎さんの銅像は、高さ12メートルもある大理石の台座の上の立っています。

 ぱっと見た感じでは冷戦時代の社会主義国を写したテレビ映像のひとコマのようです。「どうしてここにレーニン像があるのかしら?」と、一瞬、不思議な印象を受けましたが、答えはすぐ近くの案内板にありました。読んでみると革命の指導者ではなくて、戦前の根津財閥の創始者の根津嘉一郎(1860−1940年)さんであることが分かりました。

 山梨県の出身で東武鉄道や南海電気鉄道などの経営に携わったことから「鉄道王」と称されていたそうです。殖産興業に尽力し、貧弱だった日本の近代経済の基礎づくりに多大な貢献をしたと評価されています。銅像の周囲には水を張った堀がつくってあり、鯉や白鳥が気持ちよさそうに泳いでいます。

 銅像を見上げたついでに目線を空へ向けると、突き抜けるような青空が広がっています。ここで引き上げるのはあまりにもったいないので、わたしは峠をひとつ越えてから帰ることにしました。山手の方は雨が降っているかも知れませんので、雲行きが怪しくなってきたらすぐに引き返す覚悟で臨みました。

首地蔵。 (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます)

 甲府市街地へ通じる太良峠に向けて地方道31号線を登っていくと、今度は石像が目の前に現れました。しかも、首の部分だけが大きな岩の台座の上に置いてあります。先ほどの根津像よりも年代はずっと古そうで素朴な感じがしました。

 案内板を読んでみると、この首地蔵は土砂崩れの事故で亡くなった女の子と幼児を供養するために建てられたのだそうです。竣工時期は不明ですが、地元の人々の厚い信仰の対象となっており、集落を守る神様として大切に祭られています。

 首地蔵がある水口地区の方々によって記された言い伝えを以下に転記します。

 諸言
 この石仏は「首地蔵」という。造立時期は定かではない。
 伝へによると、今から数百年前この地域に大雨が続き山の地盤がゆるみ、大きな土砂崩れがあり組内数戸が崩壊したる或る日、山の中腹より巨岩が転落し、齢い十二、三才の子守り娘と背負いたる赤子が下敷きとなり死亡した。
 以来、この地域の赤子がひどい夜泣き、何かにおびえるようになった。落ちたる巨岩からは夜になるとすすり泣きの声が聞えたともいう。住人からは、娘の霊が祟っていると噂された。
 その後、この地域を訪れた旅僧がそのことを聞き、娘の慰霊のために石を彫ってこの地蔵の首を作り巨岩の上に乗せ供養をしたるところ赤子の夜泣き等はすっかりおさまった。
 村人たちは「首地蔵」と仰ぎ、香華を捧げ怠ることはなかったという。
 また、この道路工事により地蔵を撤去しようと石屋が地蔵に穴を開けた際及び人夫が地蔵を現在地に動かしたところ、いずれも病や怪我に遭遇している。
 信仰と祭りとしては、霊が宿っているので毎年春彼岸の中日、組を挙げて祭典供養が現在も行われている。
 首地蔵鎮座により住民の護念を願い記す。
 平成十二年三月
 水口区中組

 ◆首地蔵がある水口地区を過ぎて、太良峠に向かう途中で録音しました。「きょうの天気予報は午後から雨が降るということですので、午前中までに太良峠に着きたいと考えています。かなり急な坂道を登ってきましたが、ここまで来ると平野部ではたくさん栽培されていた山梨名産のブドウやモモの畑はほとんど見られなくなります」という趣旨を話しています。この段落をクリックすると音声を再生します。(録音時間51秒、ファイル容量405KB、MP3形式)

クリックすると拡大します。
万力公園から地方道31号線を通って太良峠に行く途中に首地蔵がありました。大きな岩の上に首だけのお地蔵さんが乗っています。
首地蔵を中心にして周辺を写しました。地元の水口地区の方々の厚い信仰の対象になっています。あたりはきれいに草が刈られ、手入れが行き届いています。
案内板の前で撮りました。その昔、不運にも大きな岩の下敷きになって亡くなった幼い女の子と赤ちゃんの霊が供養されているそうです。
案内板を拡大した写真です。ここに書かれている「諸言」を左の本文に書き写しました。
太良峠。 (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます)
クリックすると拡大します。
しばらく坂道を登ったところで、首地蔵のある水口地区方面を写しました。山が深くなってきました。
急坂が続きます。これを登り切ればまもなく太良峠に着きます。
太良峠にて。急に冷たい風が吹き始め、真っ黒な雲が空を覆い始めました。涼しくて気持ちいいですが、もうすぐ雨が降り始めます。
甲府市街地の方の雲は薄くて、雨は降っていないようです。写真ではよく分かりませんが薄日が差しているところもあります。

 太良峠に着いて市街地の方を眺めていると、頭上に暗雲が立ち込め、冷たい風が吹き始めました。市街地に目をやると依然、上空の雲の切れ目からところどころ太陽の光が差し込んでいます。どうやら雨が降るのは山手だけのようです。

 まもなく本格的に降り始めたので、市街地に向けて坂道を降り始めました。下る途中、一時激しく雨に打たれましたが、峠から離れるにつれて小降りになっていきました。

太良峠から甲府市街地がよく見えました。日が暮れたあと、ここから見る夜景はとても美しいそうです。

 ◆雨が降り出した太良峠で録音しました。「目の前に甲府の市街地が広がっています。甲府の半分は真っ黒な雲に覆われ、この峠も雨がぱらぱら降ってきました。冷たい冷気を含んだ風が吹き始めていて、激しい夕立が襲ってきそうです」という趣旨を話しています。この段落をクリックすると音声を再生します。(録音時間32秒、ファイル容量252KB、MP3形式)

 甲府駅の北側にある武田神社へ着く頃にはすっかりやみました。道路は乾いており、ここでは降っていなかったようです。

 局地的な天気の変動に驚きましたが、大半は晴れに恵まれたため、無事に峠を越えることができました。根津さんの銅像や首地蔵といった地場の歴史に触れることもでき、充実した一日でした。

 ◆次回は、八ヶ岳の山腹を走る周遊道路のレポートです。牧場も広がっていました。この段落をクリックすると「2006年夏休み、行くなら山梨特集」第3回目の「JR最高地点の野辺山から八ヶ岳牧場へ」へリンクします。



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