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小淵沢から南アルプス天然水の工場見学
2006年夏休み、行くなら山梨特集【5】
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小淵沢駅。 (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます)

 山梨・自転車ツーリングの第5日目は、南アルプスの麓にあるミネラルウォーター工場へ見学に行きました。飲料メーカー・サントリーの「サントリー天然水」を生産している工場で、生産設備の見学のあとに採れたての天然水の試飲をさせてもらいました。敷地内に併設されているレストランでお昼もいただきました。

サントリー天然水の工場で試飲を楽しみました。南アルプスの地下深くから汲み上げられた水です。

 わたしは、まず午前のうちに標高約1150メートルの峠を越えてからサントリーの工場へ向かうことにしました。真夏の太陽が照りつけるなか、体をよく動かし、汗をかいておけば、天然水の試飲やランチのお料理がよりおいしく感じられると考えたからです。

 工場の最寄り駅のJR中央線・小淵沢駅まで電車で移動し、ここから自転車でサントリー工場の裏手に位置する峠へ向かいました。峠までの登り坂でほどよい運動をしたあと、一気に工場まで下って試飲とランチをいただく寸法です。

 本日の記念すべき峠越えなのですが、峠の名称は残念ながら不詳です。手持ちの地図にも名前の記入がなく、現地の案内板なども見あたりませんでした。平成の市町村合併が行われる以前の行政地名は「白州町」(はくしゅうまち)で、サントリーの工場も「白州」とされていることから便宜上「白州峠」と呼ぶことにしました。

 標高900メートル近くある小淵沢駅から白州峠までは、途中にある標高約700メートルの釜無川(かまなしがわ)まで一旦下らなければなりません。釜無川は八ヶ岳と南アルプスの境を通って甲府市街地まで流れている大きな川です。この川に土砂を削り取られたためか、この一帯は巨大な渓谷になっています。

 山脈に降った雨や雪が地中に染み込み、長い年月をかけて濾過され、純度の高いミネラルウォーターとなって渓谷の至るところに湧き出てきいます。豊かな水資源を有効に活用するため、サントリーの工場をはじめとするお水やお酒の工場がたくさんつくられています。

 巨大な渓谷を自転車で走るのは容易なことではありません。渓谷に沿って下っていく分にはいいのですが、今回のように横切ろうとすると標高差が大きくてたいへんです。小淵沢駅は渓谷の八ヶ岳側、サントリー工場は南アルプス側にあるために一旦釜無川まで下りてから再び登ることになります。釜無川と白州峠の標高差は約450メートルあり、わたしは3時間余りかけて越えました。

クリックすると拡大します。
今回の活動エリアを示した図です。
走行ルートを赤線で示した地図です。小淵沢駅から標高約1150メートルの白州峠を越えてサントリー天然水の工場へ行きました。
より立体的な地図です。釜無川が地図の左上から右下へと横切り、八ヶ岳と南アルプスの間に巨大な渓谷を形づくっています。
地形測定ソフトのカシミール3Dを使って走行ルートの標高差を示した図です。全行程の走行距離は約31キロメートルでした。
小淵沢駅の前にて。
小淵沢駅前の様子です。きょうはなかなかの快晴です。
白州峠。 (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます)
クリックすると拡大します。
釜無川沿いの農道に迷い込んだときの写真です。野生動物から農作物を守るため、電流が流れている柵が張り巡らされていました。
柵に触ると感電するそうです。地元の農家の方に柵を開けてもらって通り抜けました。
白州峠で撮った写真です。路肩にはイノシシかシカのものと思われるヒヅメの跡が残されていました。
峠は切り通しになっていて見通しはききません。この後はサントリーの工場までほぼ下り坂が続きます。

 釜無川沿いの田畑をしばらく進み、支流の塩沢川に差しかかったところで白州峠へと続く林道に進路を変えます。山からイノシシやサルが下りてきて作物を荒らすとのことで、田畑の周囲には電流が流れている網が張り巡らされています。わたしはうっかり農道に迷い込んでしまい電流網に囲まれてしまいました。

 困っていると近くで農作業をしていた農家の方がわたしに気づき、「このあたりは野生動物の侵入を防ぐために網を張って通り抜けできないようにしてある」と話してくれました。わたしが「白州峠に行きたい」ことを告げると特別に網の開閉口を開けてくださり、「塩沢川沿いの林道を上っていくように」と親切に道順を教えてくれました。

 塩沢川沿いの林道を上っていく途中、路肩の土にイノシシかシカのようなヒヅメあとがたくさん残っていることに気づきました。コロコロとした黒い糞のようなものも落ちています。農家の方が話しておられたように、この付近にはたくさんの野生動物が生息しているようです。

 ◆塩沢川沿いの林道で録音しました。「キラキラと輝く澄みきった水が流れる塩沢川沿いの険しい林道を登って白州峠までやってきました。標高が高いためか白樺が多く、路肩にはシカの蹄(ひづめ)のような足跡も見られます。きょうは快晴に恵まれました」という趣旨を話しています。この段落をクリックすると音声を再生します。(録音時間42秒、ファイル容量330KB、MP3形式)

 ◆白州峠で録音しました。「これから麓にあるサントリー天然水白州工場へ見学に行きます。おいしい天然水をたくさんいただき、自然に囲まれたレストランで昼食をいただきたいと思っています」という趣旨を話しています。この段落をクリックすると音声を再生します。(録音時間24秒、ファイル容量191KB、MP3形式)

八ヶ岳と放置犬。 (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます)
白州峠からサントリー工場を目指して自転車を進めました。写真は峠付近で撮ったものです。

 白州峠を越えてしばらく下ると視界が開けるコーナーに差しかかりました。目の前には雄大な八ヶ岳が見えます。頂上付近は雲がかかっていますが美しい裾野にすっかり魅了されてしまいました。

 自転車を停めて、同行している専属カメラマンと「きれいだねぇ」などと八ヶ岳を愛でる会話をしていると、後ろの方から犬の吠える鳴き声が聞こえてきました。専カメが「ぼくらの会話を聞いて、きっとどこかの飼い犬が反応しているんだね」と、のんきな分析を披露している合間に、犬の鳴き声はどんどん近寄ってきます。どうやら1匹だけではないようです。

 来た道に目をやると、犬が一匹ひょっこりと姿を現しました。ヒモにつながれておらず、首輪すらありません。最初の1匹が一瞬立ち止まったかと思うと、後ろから2−3匹の犬が追いついてきました。犬は集団になっていまにも襲いかかってくる様相で、激しく吠え立てています。

白州峠からの下り道の途中で八ヶ岳が見えました。頂上付近は雲で覆われていますが、美しい裾野がよく見えます。この後、放し飼いの犬の集団に追いかけられました。

 専カメに目をやると、一目散に坂道を下ろうとしている背中が飛び込んできました。本来ならわたしを守るために身を挺して犬と闘わなければならないはずなのに、「なんちゅうひどい仕打ちだ!」と怒声を上げながら、わたしも自転車に飛び乗って専カメの後を追いました。

 逃げる者に対してはとことん強気な犬たちは、勢いよく吠えながら追ってきます。あやうく足を咬まれそうになりましたが、そこは文明の利器である自転車だけあって、なんとか逃げ切ることができました。犬も縄張りの範囲を大きく超えてまで追跡しようとは考えないようです。

 あの野良犬のような犬たちは、どうやら山の中に住んでいる人が大量に飼育し、なおかつ放し飼いにしているようです。放し飼いは困りますが、専カメの裏切り行為はさらに問題です。腹が立ったので罰としてサントリー工場でのランチをおごらせることにしました。

天然水白州工場。 (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます)

 工場はお昼時ということもあって観光客でごった返しでした。敷地内にはミネラルウォーターとウイスキーの2種類の生産設備が同居しており、前者が「サントリー天然水白州工場」、後者が「サントリー白州蒸留所」と名づけられています。

白州峠側から雲を戴(いただ)いた八ヶ岳を望みました。八ヶ岳の手前は大きな渓谷になっています。

 ウイスキーの試飲もできるため、駐車場でドライバーやライダーの胸に赤いシールを貼って飲酒を未然に防止する措置がとられています。シールがついた人は酒類の試飲はできません。わたしたちも自転車を運転してきているので、胸に赤いシールを貼ってもらいました。

 見学は主に蒸留施設を巡るコースと天然水のコースとに分かれています。暑いなかを犬に追われながら自転車で走り、のどがカラカラに乾いていたため、迷わず天然水のコースを選びました。午前中の見学受付はすでに終わっていたため午後からの整理券を入手し、その間にレストランで昼食をいただくことにしました。

 今回はわたしを犬の餌食にして先に逃げようとした専カメの懲罰的おごりなので、いちばん高級な牛肉ステーキを注文しました。やわらかい大きなお肉をシチュー風のソースで煮込んだ味付けで大満足です。犬の追撃から逃げ延びた勝利の味がしました。

 ◆サントリー天然水白州工場で録音しました。「お昼前に白州工場にやってきました。午後の見学の申し込み手続きを終えたあと、少し時間がありましたのでレストランで昼食をとることにしました。峠越えをしてほどよく疲れたところにおいしいお料理をいただきましたので少し眠くなりました」という趣旨を話しています。この段落をクリックすると音声を再生します。(録音時間37秒、ファイル容量290KB、MP3形式)

 ◆工場について録音しました。「サントリーの企業メセナの一環として工場敷地内の山林や施設の一部を一般公開しています。豊かな自然環境を生かしてバードウォッチングのツアーを開催したり、併設しているウイスキー博物館で蒸留酒の歴史を学ぶこともできます。南アルプスから吹き下りてくる冷たい風がとても気持ちいいです。冷房は要りません」という趣旨を話しています。この段落をクリックすると音声を再生します。(録音時間40秒、ファイル容量314KB、MP3形式)

クリックすると拡大します。
サントリー工場の敷地内にあるレストランで昼食をいただきました。敵前逃亡した専カメの懲罰的おごりということもあり最高級のステーキを注文しました。味はもちろん最高です。
大きな牛肉がシチュー風のコクのあるスープで煮込んであり、やわらかくておいしいです。夏野菜のナスが添えてあります。
工場見学のあとで試飲をしました。南アルプスの天然水とフランスのミネラルウォーター「ヴィッテル」と飲み比べて味の違いを体験しました。ヴィッテルはサントリーが国内販売を手がけています。
工場の正門から出てきたところです。天然水の工場とウイスキーの蒸留所が同じ敷地内に同居しています。
午前中は青空だったのに午後から急に雲行きが怪しくなってきました。山の天気は変わりやすいです。
天然水の試飲。 (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます)

 天然水工場の見学は、工場とは思えないほど手際がいいもので驚きました。夏休みということもありたくさんの家族連れで賑わっているのですが、大型観光バスを何台も用意して効率よく工場内を案内していきます。ガイド役の社員の方が、天然水がいかにすばらしい環境の中でつくられているのかを要領よく解説し、見学者たちを飽きさせません。

「七賢」ブランドの日本酒を製造する老舗の酒蔵「山梨銘醸」の前にて。創業は今から約250年前だそうです。

 ◆工場見学に参加するときに録音しました。「天然水やウイスキーなど複数の見学コースに分かれています。わたしは天然水のコースに参加することにしました。試飲コーナーもあるそうで、採取したての新鮮な天然水を楽しめるということです。とても楽しみです」という趣旨を話しています。この段落をクリックすると音声を再生します。(録音時間32秒、ファイル容量256KB、MP3形式)

 天然水は南アルプスの地中深くにある水脈から濾過器を通して直接的にペットボトルへ封入されます。ペットボトルに詰める工程は限りなく無菌状態に近いクリーンルームになっており、ガイドさんの話によれば、「地下深くの水脈から汲み上げた水は、一度も外気に触れることなくペットボトルへ注入する」のだそうです。

 工場の見学が終わると試飲会の始まりです。サントリーが国内販売を手がけるミネラルウォーターの「ヴィッテル」と、とれたての「天然水」との飲み比べを行いました。

 ヴィッテルはフランス東部のヴォージュ山麓から採取した硬水で、天然水は南アルプスの地下深くから汲み上げた軟水です。カルシウムやマグネシウムなどのミネラル成分の濃度によって軟水、硬水と分かれるのですが、天然水をはじめとする日本の水は基本的に軟水ということです。ガイドさんは「どちらがいいというものではなく、両方の味を楽しんでほしい」と、両製品ともにバランスよく売り込むのを忘れないところがプロだと思いました。

山梨銘醸には明治天皇も宿泊されたことがあるそうです。戦前の文部省(現文部科学省)の案内板が掲示してありました。

 工場を後にしたわたしは再び釜無川まで下って、渓谷の向こう側にある中央線・長坂駅に自転車を進めました。途中、今から約250年前に創業して、明治天皇も宿泊されたことがあるという古い酒蔵「山梨銘醸」がありました。山梨名産の「七賢」というブランドの日本酒を製造しているそうです。

 3000メートル級の山々が連なる南アルプスと八ヶ岳に挟まれた大渓谷には、酒蔵や蒸留所の施設が点在していました。豊かな水をふんだんに活用し、ミネラルウォーターやウイスキー、日本酒などの生産がとても盛んであることが今回の自転車ツーリングで実感できました。

 ◆次回は、山梨ツーリングの番外編レポートです。本編では紹介しきれなかった甲府盆地の長大なサイクリングロード網を中心に構成しています。この段落をクリックすると「2006年夏休み、行くなら山梨特集」番外編の「盆地を縦横に走る笛吹と釜無のCR」へリンクします。



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