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黒姫高原から北信五岳の斑尾山頂に登る
2008年、春の思い出特集
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手頃な名峰・斑尾山へ (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます)

 黒姫高原に行ってきました。新潟に近い長野北部の高原で、標高は700メートルほど。信州北部を代表する勇ましい独立峰・北信五岳(ほくしんごがく)が肩を並べ、野尻湖の静かな湖面が陽光をきらきらと反射させています。雪が溶けたばかりの北信地区を自転車で元気よく走りました。

黒姫高原から望む妙高山。北信五岳の1つで標高は2454メートル。朝の光を浴び、輝いて見えます。

 いつものように、地図を眺めていて、「ここ自転車で走れそう!」と決めたのが野尻湖周辺の黒姫高原でした。何年か前に行った諏訪湖の周囲もそれほど険しくなく、自転車で快適に走れたことから、野尻湖も行けるんじゃないかと考えたわけです。標高が高く、きっと空気も澄んでいるに違いない。狙いは的中で、実際に足を踏み入れてみると、山と湖のある美しい里山が広がっていました。

 野尻湖の近くには、北信を代表する5つの名峰があります。野尻湖の西側に妙高山(みょうこうさん)、黒姫山(くろひめやま)、飯縄山(いいづなやま)、少し離れて戸隠山(とがくしやま)、湖の東側にある斑尾山(まだらおやま)と合わせて「北信五岳」と呼ばれています。

 湖西の4つ山はすべて標高2000メートル級ですが、湖東の斑尾山だけ同1300メートルと低い。これは、北信五岳が“野尻湖の南東に位置する志賀高原方面から望んだ風景である”ことに由来するからだそうです。南東から見ると手前にある斑尾山は大きく見え、かつ他の4岳と同じく独立峰で容姿端麗。遜色ないという理由です。

 と、いうわけで、わたしは、標高的に手頃な斑尾山に登ることにしました。

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今回の活動エリアを示した図です。黒姫高原は新潟にほど近い長野北部に位置しています。クリックすると拡大します。
走行ルート全体を示した図です。黒姫高原から野尻湖の南側を通り、斑尾山頂に至る。赤と黄の破線区間では、徒歩で登山道を行きました。クリックすると拡大します。
北信五岳の位置関係を示した図です。野尻湖の南東に位置する志賀高原方面から望むと、五岳がほぼ均等に並んで見えるそうです。
信越本線の妙高号にて。新幹線で長野駅まで行き、そこで在来線に乗り換える。小一時間ほどで黒姫駅に着きます。市街地を抜けると徐々に緑が多くなる。車窓から美しい高原の風景を楽しめる路線です。
黒姫高原でお宿を借りる (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます)
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黒姫駅のホームから遠ざかる妙高号を見送る。駅の標高は700メートル近く。着いたのが昼過ぎだったせいか、覚悟していたほど寒くない。
つくしが生えてるのを見つけました。桜(ソメイヨシノ)も満開。季節感は、東京より1か月遅い。
黒姫高原スキー場近くの「黒姫温泉旅館あすなろ」で一泊。駅から約5キロ離れたところにあります。翌日の朝早く起きて、斑尾山に出発です。
温泉旅館あすなろさんでの朝食。旅館のすぐ前に田んぼ1枚分ほどの養殖池が数か所あり、イワナやニジマスなどの川魚が飼育されている。朝晩の食事ではとれたての川魚を振る舞っていただけます。
朝の澄んだ空気に映える妙高山。山頂付近はまだ真っ白です。青い空がとってもまぶしい。
妙高山の南側に並ぶ黒姫山。手前の田んぼには白や黄色のスイセンが群生していました。

 長野新幹線で終点まで行き、在来線に乗り換えてJR黒姫駅を目指します。到着したときはすでに昼過ぎだったため、この日は駅前商店街を探索しただけで、お宿へ向かいました。

お忙しい方も、この動画だけ見ればだいたいの雰囲気がつかめるよう編集しました。ウインドウズ付属のウィンドウズメディアプレーヤーで再生できます。(再生時間2分35秒、ファイル容量20.3MB、ビットレート1056Kbps、WMV形式)

 もともと駅前でお宿を探そうとしたのですが、割安でごはんのおいしそうな民宿がなかなか見つかりません。調べてみると、北信と新潟の県境はスキーがとても盛んなところ。このため宿泊施設はスキー場がある山腹に密集していることが分かりました。このあたりで言えば、駅から5キロメートルほど離れた黒姫高原スキー場を中心に、すてきな民宿やペンションが点在しています。

 わたしは駅前で探すのをあきらめ、スキー場近くの「黒姫温泉旅館あすなろ」さんに泊めてもらうことにしました。駅で自転車を組み立てたのち、近くのスーパーで翌日の昼食用のパンやカップ麺、インスタントコーヒーなどを調達。5キロメートル離れたスキー場のすぐ近くのお宿に向かいました。

 黒姫山のなだらかなすそ野にあり、段々畑のようにつくられた養殖池では、イワナやニジマスなどの川魚が飼育されています。朝晩はとれたての川魚を振る舞っていただけるという、普段の生活では絶対に味わえない豪勢なサービスが待っています。宿へ向かう道すがら、きょうの晩ご飯のことがチラチラと頭をよぎる。魚を焼くにおいを妄想して、唾液がジワっと出てくるのを抑えきれませんでした。

妙高山を背景に朝の準備運動。これから黒姫、飯縄のすそ野をへて、斑尾山頂に向かいます。

 とはいえ、高原にはスーパーやコンビニがないため、食料の確保は今後の重要課題。滞在中の向こう数日間、お宿へ帰投する前には、駅前スーパーでのお買い物が必須です。コンビニもあるのですが、大型ダンプなどが頻繁に通る危険な国道沿いにあるため、自転車では行きにくい。

 昔ながらの商店街が並んだ駅前は、人通りが少なく、ちょっと寂しい感じはあります。でも、クルマに乗らない人に優しい町であるとの見方もでき、わたしは駅を“前線基地”として活用することにしました。お宿から片道5キロと兵站が伸び気味のきらいはありますが、贅沢は言えません。

巨大な山が一列に並ぶ (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます)

 翌日早朝、わたしはお宿を出発。威厳ある北信五岳の一座・斑尾山へ向かいます。黒姫高原から野尻湖の南側を回り込むルートで、山麓までの距離は約12キロ。クルマの通りが多い国道を避けて、住宅街やら田畑の脇を走りました。

 田んぼの畦(あぜ)にはつくしがたくさん頭を出し、沿道に植えられたソメイヨシノも今が満開… って、あれ、東京の郊外で1か月以上前に見た光景が再び目に前に現れています。ちょっとした既視感を感じつつ、ここが標高700メートルの高原だということを思い出しました。

 山の方を見れば、どの山の頭も白いし、今、自転車で走っている道路脇の日陰にも、ときおり雪だるまが溶けたようなシャーベット状の塊が残っています。ここは甲信越地方でも、指折りの豪雪地帯で、5月の連休まで春スキーが楽しめるほどのところ。なるほど、春の訪れが遅くて、冬の到来が早いのが容易に想像できます。

 黒姫高原からペダルを回し始めて、すぐ目についたのが妙高山。黒姫から見ると北側にあり、もうそこは新潟県。北信五岳の1つなのに、なぜ新潟にあるのかは深く考えないことにして、南側に目を向けると妙高と同じく独立峰の黒姫山が見えます。そのさらに南方には飯縄山。3つの巨大な山が一列に並んでいて壮観です。

 妙高がいちばん高くて2454メートル。次いで黒姫が2053メートル、飯縄が1917メートルと南へ行くほど微妙に小振りなる。小さいといっても、たとえば飯縄の場合、足下の高原から1200メートル余りも標高差でそびえ立っているわけで、でかいことに変わりない。わたしが1日で往復できる標高差は体力的に1000メートルが限界。個人的には飯縄山でさえ登頂は難しい大きさです。

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走行ルートを立体的な地図で示しました。破線区間は徒歩。
全行程約35キロメートルの標高差を示した図です。
【連続写真1】左後方が妙高山、右側が黒姫山です。
【連続写真2】道の両側にたんぽぽが咲き、つくしが生えている。
【連続写真3】うららかな風に乗って鳥の鳴き声が遠くに聞こえる。
痩せた尾根、急登続く (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます)
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山腹に続く林道。正面に斑尾山が見える。徐々に勾配が大きくなり、自転車を押し歩く時間が増える。
分水場。山の湧水は、写真の右と左の水路に分けられる。麓の田畑に水を分配する大切な場所です。
分水場で記念撮影。透き通った水が山からあふれ出ています。あちこちにまだ雪が残っているところを見ると、雪解け水なのかも知れません。
林道と登山道が接するところで駐輪。徒歩で山頂を目指します。白樺の林が出迎えてくれる。靴に砂が入らないよう、スパッツ(筒状でスネに巻く登山用具)を履きました。
白樺並木の斜面から尾根に取りつき、山稜沿いに登っていきます。歩く距離は2キロ弱と短いものの、予想以上に傾斜がきつい。

 こういう大きい山は遠くから眺める方が美しい。と、いうことで妙高、黒姫、飯縄が一望できる斑尾山登頂を目指して、自転車を進めます。黒姫高原からは3座が縦一列に見えるのですが、野尻湖の向こう側にある斑尾からは横一列に見えるはずです。

 斑尾は1381メートルと他の4座に比べて明らかに低い。平野部がすでに700メートル近くあるため、実際に登るのは600−700メートルほどでしょうか。おまけに、5合目くらいまで林道沿いに自転車で行けます。これは楽勝…のはず。(このときは、そう思っていました。汗)

 しかし、林道は未舗装部分が多く、しかも勾配が10%(100メートル走って10メートル登る)くらいの箇所もある。ほとんどが押し歩き。さらに、自転車を停めて、徒歩で登り始めてからの登山道は急登の連続でした。

 まず、尾根に取りついてから山頂に進むのですが、次第に道が痩せていく。歩く距離は2キロ弱と短いものの、傾斜がきついうえに尾根が細くて歩きにくい。いくら北信五岳のなかで標高がいちばん低いといえども、なめちゃダメですね。

「蟻のと渡り」と記された斑尾山の尾根。道は痩せて細い。

 樹木の幹に巻き付けられた案内板をふと見ると「蟻のと渡り」と記されていました。「蟻の−−」といえば、五岳のなかで最も西側にある戸隠にもある。その山稜は半端ないほど尖ったナイフリッジで、四つん這いになってやっと渡れるほどです(写真で見ただけですが。苦笑)。蟻が一列になって渡るようなので、こういう言い回しをするのでしょうが、まさか斑尾にも同じ地名があるとは意外でした。

 ◆斑尾山の山腹を歩きながら録音しました。「北信五岳の1つ斑尾山を登っています。さきほど通ってきた分水場では、透き通った水が山からあふれ出ていました。あちこちにまだ雪が残っているところを見ると、雪解け水の仕業かも知れません」という趣旨を話しています。この段落をクリックすると音声を再生します。(録音時間1分10秒、ファイル容量828KB、MP3形式)

野尻湖の囲む一大パノラマ (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます)

 同行の専属カメラマン(専カメ)に持たせてある高度計を見ると、着実に山頂へ近づいていることが分かる。雲がずいぶん低く感じられるようになったので振り向くと、眼前に野尻湖を囲む一大パノラマが展開されていました。ところどころ明るい緑色をした丘陵が見え、その向こうに飯縄、黒姫が並ぶ。右手の方には波の静かな湖面が柔らかい光を反射しています。

山頂近くの大明神岳から野尻湖方面を望む。正面左から飯縄、黒姫、妙高の3座が横一列に並ぶ。

 手足を踏ん張って最後の急登を越えると大明神岳に着きました。山頂よりわずかに手前ですが、見晴らしは抜群。ここでお弁当を食べることにします。本日持参してきたのは、カップラーメンとインスタントコーヒー。さっそく登山用の携帯ガスコンロに火をともす。ラーメンのカップに沸騰した湯をすべて注いだあと、今度はコーヒー用の湯を沸かします。

 大地や山、湖からなるダイナミックな地形。白い雲が浮かぶ青い空が視界いっぱいに広がる。右側から妙高、黒姫、飯縄と独立峰が並び、左へ目を向けると長野市街の方まで見通せます。鍋がコトコト音を立て始めたので、少し慌ててガスの元栓を締め、熱湯を紙コップに注ぐとコーヒーのいい香りがたちこめてきました。

 すそ野は、緩やかな斜面ばかりでなく、どことなくゴツゴツした感じもあります。このあたりの山の多くは火山で、高原そのものが何万年か何十万年か前の噴火のときに吐き出された溶岩で形づくられたからなのかも知れません。手前に見える野尻湖も火山活動による噴出物や隆起やらでせき止められたという説が有力。今の緑に覆われた美しい風景からは容易には想像できませんが、有史以前、荒々しい自然の横顔が垣間見れた気がします。

ビスケットを取り出して食べる。コーヒーとよく合います。

 ◆斑尾山頂近くの大明神岳で録音しました。「四方が山に囲まれているのがよく分かります。すべての山頂に雪がたくさん残っています。気温は20度と高いですが、平野部に比べて湿度が低く、さらっとした感じです」という趣旨を話しています。この段落をクリックすると音声を再生します。(録音時間53秒、ファイル容量631KB、MP3形式)

 ◆鳶(とび)が飛んでいる様子を録音しました。「わたしの目の高さを、鳶が大きな翼を広げて飛んでいます。太陽に暖められて上昇する気流を巧みに使って、標高1300メートル余りの高さまで舞い上がってきたようです。ピーヒョロロと甲高い鳴き声が高原の山々に響いています」という趣旨を話しています。この段落をクリックすると音声を再生します。(録音時間53秒、ファイル容量626KB、MP3形式)

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山頂に近づくにつれ、傾斜が急になる。ふと足下を見ると、小さな青い花が咲いていました。
【連続写真1】大明神岳から長野市街地方面を望む。視界が開け、遠くまで見通せます。
【連続写真2】上の写真から左方向へカメラを少しパン。正面左よりに飯縄、野尻湖の端も見えます。
【連続写真3】さらに左にパン。野尻湖の全体が見えます。その後に飯縄と黒姫。雲が低く感じられ、自分の頭がぶつかりそうです。
見晴らし抜群の大明神岳で昼食。カセットコンロで湯を沸かし、カップ麺とコーヒーをいただく。
うまい! ありふれた200円のラーメンでも、汗を流して登った絶景ポイントでは、格別な味わい。
すそ野は、緩やかな斜面ばかりでなく、どことなくゴツゴツした感じ。かつての噴火により、高原そのものが溶岩で形づくられたからなのかも。
山頂には雪の塊が残る (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます)
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斑尾山頂。少し手前の大明神岳に比べ、見晴らしがきくわけではなく、意外に地味なところ。
山頂には大型ダンプ1台分くらいの雪が残っていました。
大明神岳に戻ってくると、再び妙高山がよく見える。
大パノラマの美しさに言葉を失う。
麓まで下りてきて振り返ると、正面に斑尾山が見えました。
のどかな里の風景になごむ。日も傾いてきたので帰路につきました。

 普段は何げなく食べている200円のラーメンでも、汗を流して登った絶景ポイントでは、格別な味わい。行列ができる幻の高級ラーメンとぜんぜん遜色ないし(そんなラーメン食べたことないけど、きっと劣らないはず!)、インスタントコーヒーも挽き立ての豆でいれた以上のコクと香り。容姿端麗な妙高や黒姫、飯縄の三座の前の広大な空間に吸い込まれそうになりながらも、胃袋だけはしっかり満たしました。

妙高や黒姫、飯縄、斑尾の名峰に囲まれる野尻湖。おだやかな湖面に柔らかい光が反射しています。

 しばらく休んで足取りもしっかりしてきたところで、山頂に赴くことにします。稜線を歩いて10分ほどで到着。見晴らしがきくわけではなく、意外に地味なところでした。山頂を示す三角点がなければ、うっかり通り過ぎてしまうくらい。でも、すみの方には雪が大型ダンプ1台分くらい残っていて、標高が高いことを実感しました。気温は20度ほど。寒いというより、むしろ汗ばむくらいなのですが、目の前は雪景色という何ともアンバランスな光景です。

 記念写真を撮ってから下山します。眺望すばらしい大明神岳まで戻り、足を踏み外さないよう、慎重に歩を進める。登るより、下りるときの方が神経を使います。ただ、救いは五合目に自転車が停めてあるってこと。登ってくるときは歩きとほとんど変わらない遅さでしたが、帰りは楽。未舗装でも下り坂なら時速10数キロは出せるわけで、歩きのざっくり3倍。時間を大幅に節約できますので、下りに思いのほか時間がかかったとしても、精神的には余裕があります。

よく体を動かしたあとのおいしい晩ご飯。お宿の養殖池でとれたてのヤマメをごちそうになりました。

 自転車を停めてあるところまで戻ればこっちのもの。安全運転で黒姫高原のお宿まで帰りました。北信五岳を舞台にしたツーリングレポートは、まだまだ続きますよ。次回は「天の岩戸が隠された霊峰・戸隠山を望む」です。ここをクリックするとリンクします



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