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表丹沢林道から三ノ塔、ヤビツ峠を駆る
2007年、夏の思い出特集
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台湾DUMAくん来る (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます)

 2007年夏、表丹沢林道を通って標高1205メートルの三ノ塔(さんのとう)まで登りました。自然豊かな丹沢大山国定公園(神奈川県西部)のなかにあり、静かで、見晴らしがきくポイントが数多くある素敵なルートです。こんこんと湧き水がでる「龍神の泉」もありました。また、今回の自転車ツーリングでは、台湾の人気キャラクター「DUMA(ドゥーマ)」くんもお供してくれました。

表丹沢林道沿いにある名水「龍神の泉」。清らかな水がこんこんと湧き出ています。台湾の人気キャラクター「DUMA(ドゥーマ)」くんと。

 いつものように小田急線の新宿発・急行列車に乗って丹沢方面へ向かいました。きょうは、渋沢駅から表丹沢林道を経て1200メートル級の山の登る壮大な計画です。無事に辿り着けるようにと、台湾の友人が頼もしい助っ人・DUMAくんを派遣してくれました。アフロヘアの可愛いクマちゃんです。

 表丹沢林道は丹沢山地の南側の山腹につくられた道です。江戸時代から400年近く地域の住民の手によって大切に管理されてきたそうです。管理区域が細かく分かれていて、それぞれに固有の名称がつけられていますが、ここでは便宜上、南側にある林道全体の総称として“表丹沢林道”とさせていただきます。

 林道の6割方は舗装してあり、比較的走りやすい。見通しの利かない沢沿いの道を延々と上っていくというタイプではなく、少しずつ標高を上げながら見晴らしのよい山腹を横切っていく感じです。進行方向の左手は崖が迫っていますが、右手は視界が開けるところがあり、麓の秦野市の街並みが見えます。数ある林道のなかでも、眺望のよさではトップクラスです。

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今回の活動エリアを示した地図です。クリックすると拡大します。
今回の走行ルートを示した地図です。表丹沢林道から三ノ塔(標高1205m)へ登頂。ヤビツ峠を通って秦野駅へ下りました。
DUMAといっしょに、お気に入りの小田急線で表丹沢に向かう。
秦野戸川公園の遠景。シンボルの大きな吊り橋が見える。
渋沢駅から出発 (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます)
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表丹沢林道、三ノ塔までのルートを立体的に示した図です。カシミール3Dで作成しました。
走行ルートの標高差を示した図です。全行程の走行距離は約33キロメートル。カシミール3Dを使って制作しました。
丹沢大山国定公園の入口にて。国定公園にふさわしい、立派な門構えです。
丹沢大山国定公園の地図。国定公園の周辺に神奈川県立の自然公園が点在。中央の山岳地帯は特別保護地区に指定されています。

 渋沢駅に降り立ったわたしは、さっそく自転車を組み立てました。丹沢山系から流れ出る水無川(みずなしがわ)を上流に向けてペダルを回すと、小一時間で神奈川県立・秦野戸川公園に到着。最初の休憩をとりました。遠くからでもよく見える大きな吊り橋がかかっていて、公園のシンボル的存在になっています。

秦野戸川公園の吊り橋にて。自転車の乗り入れはできないので、押し歩いてきました。

 神奈川県の大型公園によくあるパターンで、自転車は乗り入れ禁止。押して吊り橋のところまで行き、水無川の清流を眺めました。川の両岸に公園が整備されており、川遊びもできるようになっています。表丹沢林道へは水無川の北側の道を進むのがお勧め。川の南側の道を上ってきてしまうと、広い園内を延々と押し歩きしなければならないので要注意です。

 公園を過ぎると、すぐに未舗装になります。けっこう急な勾配で、かつ雨水の浸食で浮き出てきた石がゴロゴロ。走りにくいので、再び押し歩き。しばらくすると左手に「丹沢大山国定公園」の立派な地図付きの案内板が現れました。どうやらここが国定公園の入口のようです。

 さすがに国定公園だけあって、今、通ってきた都市型の秦野戸川公園とは比べものにならないほどの規模です。東は霊峰・大山(標高1252m)のすそ野から始まり、西は山梨県との県境まで、北は宮ヶ瀬湖まで広がる一大自然公園です。これから登ろうとしている三ノ塔のさらに先にある塔ノ岳(1490m、とうのだけ)や丹沢山(1567m)、蛭ヶ岳(1672m、ひるがたけ)、檜洞丸(1600m、ひのきぼらまる)など丹沢で最も標高の高い区域は“特別保護地区”として厳重に保護されています。

清水が湧き出る (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます)

 砂利道を上っていくと、小さな滝があり、その横に湧き水がありました。丹沢名水の「龍神の泉」です。水を汲みやすいよう、公園の水飲み場のような小さな給水施設がつくってありました。まだ暑い季節でしたので、ここで水を補給できるのは、ほんとうに有り難いです。

龍神の泉。写真左側に小さな給水施設があります。自転車ライダーの方が、水の補給をしていました。

 泉の脇には「緑基金」と書かれた郵便ポストのような緑色の金属製の募金箱が設置してあります。きっと募金をベースに水飲み場を維持・管理しているのでしょう。わたしはお水をいただくお礼として、同行している専属カメラマンの分も合わせて2人分の硬貨を入れました。

 丹沢山小屋組合による案内板には、おおよそ以下のように書かれていました。

[丹沢名水“竜神の泉”の由来](概要)
 この泉の西に雨乞嶽(あまごいたけ)があり、東側に雨乞山(あまごいさん)がある。長く日照りが続くと、村人達が「大雨たった、まきたった…」と歌をうたい、雨の降るのを願った。雨の降るのを願うのは、そこに竜神がおいでになるからである。
 また、行者や猟師、炭焼きの人が喉をうるおし、一息つく所で、雨も飲み水もすべて、竜神が司ると言われている。
 標高520メートルの山腹に竜の形をした岩があり、こんこんと清水が湧出している。それでこの泉を“竜神の泉”と呼ぶ。

 すぐ近くにある霊峰・大山も雨乞いの神様として信仰されており、この地域一帯は豊かな水源があることを示しています。

 山と渓谷社の新・分県登山ガイド「神奈川県の山」によれば、大山の別名は「雨降山(あめふりさん)」とのことで、これが転じてか、阿夫利山(あふりさん=あめふりさん)と呼ばれることもあるそうです。“阿夫利詣(もう)で”は江戸時代から盛んに行われており、この一帯に住むとされる龍神様は、古くから多くの人々に信仰されてきたことがうかがい知れます。

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丹沢名水・龍神の泉。貴重な給水ポイントです。沢から流れ出た水が林道にあふれ出ています。
丹沢山小屋組合による案内板。
龍神の泉の前で台湾のDUMAくんと記念撮影。
アシナガバチが飛んできました。DUMAくんが天敵の“クマ”だからでしょうか。すぐ立ち去るよう警告を発しているようです。
大きな蜂に今にも刺されそうです。とても怖い。少し分かりにくいですが、DUMAの頭付近に黄色い蜂の姿がぶれて写っています。
土砂崩れ (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます)
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小腹が減ったので、お昼前の腹ごしらえをしました。
あちこちから水が染み出る表丹沢林道を元気よく走ります。
突然、大きな泥たまりが現れ、行く手を阻みました。土砂が排水溝をふさいでしまったようです。
道幅いっぱいに泥水がたまっています。最も深いところで20センチほど。渡る途中にもし転んだら、帰りの電車には乗れません。
泥にタイヤをとられながらも、慎重に泥たまりを渡りました。下地がアスファルトでしたので助かりました。

 龍神の泉からしばらく進むと、右手に折り返す形でアスファルトで舗装された登り坂が現れます。表丹沢林道へはこの道を進みます。道のあちこちから水が染み出ており、森林全体でたくさんの水をたたえていることがよく分かります。

表丹沢林道から麓の秦野市街地がよく見えました。靄(もや)がかかっていなければ小田原や相模湾までよく見えると思います。

 丹沢山系の南側は海からの湿った風がよく当たり、雨が降りやすい条件が揃っているのだと思われます。このためか、豪雨になることもしばしばあるようで、わたしが行ったときはところどころ、崖崩れが見られました。台風や集中豪雨による爪跡で、主に沢が道を横切るところで土砂が流れ出ていました。

 直径1メートル以上もある大きな岩が道路に山積みになっているのを見ると、水の力の恐ろしさを感じます。他にも道幅いっぱいに広がった大きな水たまりもありました。全長は5メートルほど、最も深いところで20センチほどあり、水たまりというよりは“池”のようです。土砂の山は自転車を担いで乗り越え、水たまりはできるだけ浅いところをバシャバシャと歩いて渡りました。

 この日、履いていたのは登山靴ではなく、普通の運動靴。道がこれほどまで荒れているとは予想外でした。砂利やら泥やらが靴の中まで入ってきて、苦労しました。土砂や水たまりさえなければ、表丹沢林道はとても走りやすい道です。自然の厳しさを痛感しました。

堆積した泥に、蹄(ひづめ)の跡が残っていました。鹿か猪(いのしし)でしょうか。

 途中、何人かの自転車ライダーの方とすれ違ったのですが、皆さん一様に泥だらけ。なかには「この先、土砂崩れがひどいよ」と教えてくれる方もいて、ある程度は覚悟していました。でも、実際に土砂を越えてみると、鈍くさいわたしはすれ違った皆さんに負けないくらい泥だらけになりました(笑)

三ノ塔の山頂へ (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます)

 表丹沢林道は道沿いに進むと地方道70号線に出ます。きょうは三ノ塔に登る計画ですので、中盤を過ぎたあたりで表丹沢林道から外れて菩提(ぼだい)峠方面に抜ける道へ進みました。三ノ塔は表丹沢林道の北側にある標高1205メートルの山。表丹沢林道から菩提峠までの急坂を上り、さらに三ノ塔方面へ続く林道を1キロメートル弱進むと登山道があります。

無事に泥たまりを渡れたのはいいけれど、タイヤや足回りが泥だらけになりました。

 じゃまにならないところに自転車を停め、徒歩で山頂を目指しました。片道2時間弱の道のりで、山頂まで往復すると休憩時間も含めて4時間近く。けっこう時間がかかります。土砂崩れで時間をとられてしまい、登り始めた時間はすでにお昼過ぎ。帰りはよほど時間をかせがないと日暮れまでに駅に着けません。

 幸い、三ノ塔からの帰路は少し登り坂があるものの、9割方が下り坂。なんとか日没までに間に合いそうです。それに、きょうは台湾からの頼もしい応援DUMAくんもついています。

 登山道はすぐに尾根道へと変わり、視界がぐっと開けました。この登山道は二の塔から三ノ塔と続き、丹沢山系で最も人気のある山のひとつ塔ノ岳(とうのだけ)に至るメジャーなルートです。展望も抜群で、尾根道からは霊峰・大山がすぐ目の前に見え、迫力満点。地図で見ると県道70号線で最も標高の高いヤビツ峠を挟んで反対側に大山があります。ヤビツ峠は標高761メートルほどしかありませんので、遮るものがほとんどないことが分かります。

 風景を楽しみながらも、必死で歩きましたので、予定より少し早い1時間半余りで山頂に着きました。360度の視界が広がり、とりわけ大山の眺めは最高です。DUMAくんも満足そうです。

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泥たまりを渡り終えたと思ったら、今度は土砂が山積みになっていました。大雨が降ったとき、沢から水が噴き出したようです。
直径1メートル余りある岩が転がっています。普段はおとなしい沢でも、一旦、雨が降ると様相が一変。恐ろしい龍のように暴れ回ります。自転車を担いだり、押し上げたりしながら越えました。
徒歩で三ノ塔へ登り始めたところ。山頂までは2時間近くの道のりです。もちろんDUMAくんもいっしょ。
見晴らしのいい尾根道に出ました。道がやせ細ったところもあり、注意深く進んでいきます。
大山がよく見える (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます)
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三ノ塔の山頂にて。標高1205メートル。後ろに見える大きな山は霊峰・大山です。
山頂でDUMAくんと。
わたしの大好きな風景指示盤。山の位置や名前を確認しました。
日暮れが迫っているので、そそくさと帰路につきました。写真左手奥は大山です。
麓の秦野市街地がよく見えました。日が傾いて影が伸びています。
地方道70号線の最高地点・ヤビツ峠まで戻ってきました。
ヤビツ峠から少し下ったところにある菜の花台の展望台。麓の街が一望できます。

 山頂には避難小屋や風景指示盤などの設備がありました。わたしは山頂に設置してある指示盤を見るのが大好きで、さっそく周囲の山の形と名前を確認しました。山脈をみたときに、「あれは○○山、こっちは××岳」と分かるようになれば、楽しさが倍増します。ちょうど夜空を見て星座の名前がつらつらと言えるようなもので、かっこいいし、ぜひ言えるようになりたいです。

三ノ塔の山頂にて。写真左方向がヤビツ峠、右方向が塔ノ岳です。

 ◆三の塔の山頂で録音しました。強い風がマイクに当たる音がします。「三の塔の山頂から丹沢・大山が真正面に大きく見えます。ここは大山山頂とほぼ同じ高さ。自力で登ってきたと考えると感無量です」という趣旨を話しています。この段落をクリックすると音声を再生します。(録音時間56秒、ファイル容量441KB、MP3形式)

 ◆三の塔まで続く林道について録音しました。「先日の大雨が原因で、途中の林道はあちこち崩落していました。土砂崩れや大きな水たまりで行く手を阻まれましたが、自転車を担いだりしながら何とか乗り越えました」という趣旨を話しています。この段落をクリックすると音声を再生します。(録音時間48秒、ファイル容量378KB、MP3形式)

 ◆林道の崩落についての録音です。「登ってくる途中、行き違った何人かの自転車ライダーの方に“行く手に土砂崩れや水たまりがある”と教えてもらいました。実際に崩落したところまで行ってみると、想像以上の崩れようでした。泥もすごい。なるほど、今思えば、行き違ったライダーはみな泥だらけで、なかには疲れ切った表情をしていた人もいました」という趣旨を話しています。この段落をクリックすると音声を再生します。(録音時間49秒、ファイル容量389KB、MP3形式)

DUMAくんといっしょに踊った喜びのダンス。山頂を極めたうれしさを表現しました。

 日暮れの時間が迫っているため、早々に山頂を後にしました。大山や秦野の市街地を見ながら自転車が置いてあるところまで下山。菩提峠を経由して県道70号線に入り、ヤビツ峠を越えて秦野駅まで帰りました。登るのはあんなにたいへんだったのに、自転車での下り坂はほんとうに速いです。あっという間に駅に着きました。

 表丹沢には他にも林道が整備されています。たとえば、大山から連なる尾根を越えて伊勢原駅方面へ抜ける林道もあります。次回はこうした林道を組み合わせて、より発展型のルートにも挑戦したいものです。雄大で美しい丹沢大山国定公園がますます好きになりました。



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