| 底土港で東海汽船を見送る (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます) |
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八丈島ツーリングレポートの第2回目は、“八丈七不思議”のひとつ「ポットホール」です。三原山から染み出る清流が、長い年月をかけて少しずつ岩を削ってできた自然の彫刻。壺の底ような穴が、水の流れに沿っていくつも連なっています。(第1回目のレポートはここをクリック)
わたしは島の玄関・底土(そこど)港から三原山へ向かう登龍(のぼりょう)峠へ自転車を進めることにしました。 この日はあいにくの曇り空。おまけに強い風が吹いている。島の風は並大抵の強さではありません。ちょっとした台風に出くわしたようなもので、山頂や岬など風の集まりやすいところに出ると吹き飛ばされそうです。 ただ、遮るもののない外洋の風向きは、ほぼ一定した単調なもの。山陰に入ると急に穏やかになります。きょうは西からの風なので、東側の斜面から三原山の南側斜面にあるポットホールを目指します。 朝10時。東海汽船の出航時だったため、見送ってあげることにしました。港に出てびっくり。波が予想以上に高く、着岸している“かめりあ丸”が大きく揺れています。っていうか、よく横付けできたものだと感心しました。港といっても海に突き出た桟橋がひとつあるだけの簡易なつくり。波の影響を受けやすく、船の欠航もしばしば。桟橋に波がかぶった時点でアウト。 無理に接岸しようものなら、船の横っ腹を桟橋のコンクリートにぶつけて下手すれば沈没もあり得る。とても危険です。 このため、西風の日の東海汽船の寄港先は東側の底土港。東風の日は西側の八重根(やえね)港に入港することで定時運行に努めています。ただ、入港当日まで島のどちら側に船が着くのか分からないため、土地勘のない観光客は要注意。 | クリックすると拡大します。 |
| 巨大な龍の壁画が踊る登龍峠 (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます) |
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かめりあ丸は旅客を満載して10時少し過ぎに出港。横風と海流に押されて少し傾いているように見えますが、この程度のことで沈むようなやわな船ではなく、速度を上げながらどんどん大海へ乗り出します。今夜遅くには東京・竹芝桟橋に着くことでしょう。
わたしは本日午前の部の難所、登龍(のぼりょう)峠に向けてペダルを回し始めました。地形測定ソフトを使ってあらかじめ予想はしていたのですが、予想通りの急な上り坂で参った。 蛇行しながらぐんぐんと高度を上げていき、もう少しで標高300メートル余りの峠に差し掛かろうとしたところで、巨大な龍が姿を現す。土砂を防ぐコンクリート製の側壁に見事な銀色の龍が形づくられています。ずっしりとした存在感。ブロックを貼り付けたモザイク状の壁画で、大きさはわたしの背より高く、長さは軽く10メートルを越える威容ぶりに驚きました。 ぎょろっとした鋭い目を剥いた巨龍の横を通り、さらに登ると登龍峠。峠は風の通り道になっているため、猛烈な風が吹き抜けます。飛ばされないように身をかがめながら、峠に整備された展望公園の「登龍園地」から望みました。 きょうは雲が低く垂れこめていますが、眼下にはさきほど東海汽船を見送った底土港が見えます。海面が波立ち、ここと同じように強く風が吹き付けているようです。正面方向はガスに視界を遮ぎられ、目の前にそびえ立つ八丈富士でさえ、やっとすそ野が見える程度。 でも、晴れた日には八丈富士はもちろん、東京寄りに100キロほど離れた三宅(みやけ)島や、その手前に浮かぶ小さな御蔵(みくら)島まで見えるそうです。
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| ポットホールに大接近 (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます) |
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ここから午後の部のスタート。本題のポットホールに大接近です。登龍峠から道なりにしばらく進むと、三原山山腹を横切る“こん沢林道”の入り口が現れます。道幅は細いものの、ほぼ全域、舗装された全長約6キロほどの林道で走りやすい。
林道に入るとクルマも通らなくなり、静寂さが増します。並大抵ではない強風が吹き荒れる日も多く、すらりと背を伸ばした木は見あたりません。どれも身をかがめて、互いに寄り固まるような姿勢。しっかりと地面に根を下ろしています。木陰は湿度が高く、シダ植物がびっしり生えて、まるで緑の絨毯のよう。 島の東側の斜面に位置していますので、朝から吹き荒れる西風は、文字通り“どこ吹く風”。静かなものです。南の島のジャングルのように繁茂した木々の間から聞こえてくる野鳥の声に耳を傾けながら坂道をじわじわと登る。こん沢林道の標高が最も高いところは約450メートル。途中にポットホールを間近で観察できる場所があります。 ポットホールは、川床の岩盤のくぼみが大きくなったもの。くぼみに入り込んだ小石が、水の流れによって転がってくぼみの壁を長い年月をかけて削る。丸い鍋か壺の底のような形なるためポットホールと呼ばれています。三原山のポットホールは大小さまざまな円形の穴がいくつも連なり、何百メートルもの“壺の行列”を形づくる規模の大きさ。全国的に珍しい大規模なもので、八丈島の七不思議のひとつです。
海に囲まれた八丈島ですが、淡水はきわめて貴重です。海洋性の気候の影響で降水量は多いのですが、平野が少ないために、山から染み出た水は海へまっしぐらに落ち込む。透水性の高い火山の粗い地質は貯水力に乏しく、山に入っても沢らしい沢はほとんど見られません。ポットホールを形づくった沢も、途中で火山礫(れき)の下へ再び染み込んでしまうのではないかと思えるほどのか細い水量。その貴重な水源によって、ポットホールが刻まれたと考えると感慨深いものがあります。 | クリックすると拡大します。 |
| わたし選・八丈島七不思議 (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます) |
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さて、“七不思議”なので、残り6つの不思議に触れないわけにはいきません。第一不思議が三原山のポットホールであるのは上述の通り。人間とは桁違いの長い時間軸を持つ自然だけがなせる技であり、不思議そのもの。第二から第七不思議までは以下に列挙します。自然的なものから人間的な不思議まで幅広いです。
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| 末吉から時計回りで帰る (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます) |
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ポットホールを後にしたわたしは、東端の集落・末吉(すえよし)まで林道づたいに下りてきました。ちょっとした商店や自販機、小学校があります。密林に埋もれた山腹から出てきたわたしにとって、ほっと一息着ける人里。ジュースを買ってしばしの休憩をとりました。
島を一周する県道を時計回りに帰ることにしました。三原山のすそ野をぐるりと取り巻くようにつくられた道で、けっこうなアップダウンがあります。末吉の隣町の中之郷までは150メートル近くの標高差がある峠越えがあり、さらに坂下までいく途中にも約50メートルの峠が待ち構える。体力を使ったあとの50メートル登坂はけっこうきつい。 尖った山頂から伸びる急斜面がそのまま海へ突き刺さるのが火山島の特徴。海岸線は外洋の荒々しい波に浸食され、断崖を形づくっています。大きな川がないために土砂が堆積せず、崖がどんどんと成長してしまったのでしょう。自然の厳しさを感じざるを得ません。 ただ、そうした自然と人間との緊張関係があるがゆえに、起伏の合間に時折見える山や谷、どこまでも広がる海は絶景そのもの。人を寄せつけない孤高の美しさです。「あぁ、八丈島に来てよかったなぁ」と、心地よい疲労感と満足感がこみ上げてきました。 |
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