| 小木町に向けて出発。(◆の段落か写真をクリックすると写真が見られます) |
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やっと晴れました。わたしは、走り残していた小佐渡の南側半分を走ることにしました。天気が気になり、朝4時に目が覚めました。窓を開けて、ぼんやり明るくなった空を見上げると、驚くほど透き通った、夏の青空が、うっすら、かかった朝霧の向こうに見えました。
天気は快晴。この貴重な日を有意義に過ごすため、わたしは小佐渡の南端の「沢崎鼻」(さわさきはな)まで走ることと、小佐渡最大の港町・小木町(おぎまち)まで行くことにしました。
小木町にある小木港は、「たらい舟」に乗れる港としても有名です。たらい舟とは、海苔や貝などを採るために考案された、たらい型の作業用の舟です。
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| より詳細な地図。地図をクリックすると拡大します。 |
たらい型の円形であるため、360度、どの方角にも小回りがきくのが特徴です。たらい舟は、今でも、磯辺の海産物の採取などで実用されています。
わたしは、小佐渡の最南端である沢崎鼻へいくルートを調べました。すると、沢崎鼻までの途中に、どうしても国道350号線を通らなければならないことが判明しました。
迂回すれば、国道を避けて通ることはできるのですが、時間を有効に使うためには、国道を通るのが最も効率的です。日本の国道は、往々にして車の交通量が多いうえに、道幅が狭く、歩道がないのが特徴です。歩行者が通ることを考慮に入れていません。おまけに大型ダンプやトレーラーが地響きをたてながら爆走するため、とても危険です。
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| 真野町で開かれている朝市。新鮮な野菜や花卉類、農家の人たちが制作した竹細工などが売られていました。 |
このため、わたしは、いつもより、出発を3時間、前倒しにして、朝5時に出発することにしました。早朝なら、いくら国道といえども、いくぶん交通量が少ないからです。
朝食は取らずに、新穂村から県道づたいに真野町まで出ました。真野町に着いたのが朝6時。朝食前に1時間、自転車を乗ったので、さすがにお腹が減ってきました。わたしは、真野町役場前にあるちょっとした休憩施設で、持参してきた朝ご飯を食べることにしました。
ベンチに座って、朝ご飯を食べていると、朝6時にしては、とても人通りが多いことに気づきました。“朝市”(あさいち)です。町役場からみて、少し路地に入ったところに、真野町の朝市が開かれていました。
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| アルコール共和国のボス「アルカポネ」のシール。くわえタバコで、こわおもてのおじさん。 |
真野町は、地酒が有名で、「アルコール共和国」(真野町観光協会運営)を標榜しています。同共和国(?)のボスは、「アルカポネ」という男性です。この男性の似顔絵シールを、朝市があったすぐ近くの商店で発見しました。
アルカポネは、タバコをくわえて、なおかつアルコール共和国のボスというのだから、なんだか、すごく不健康そう(失礼!)なんですけれど、いちおう真野町のシンボルになっているそうです。今の時代、子供には、ちょっと見せにくいシールですね。(笑)
| 国道350号線に入る。(◆の段落か写真をクリックすると写真が見られます) |
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| 国道350号線。正面の海は真野湾。左側には大佐渡の南端が見えました。 |
わたしは、懸案の国道350号線に入ることにしました。朝食を食べて、力が湧いてきたところで、国道を、巡航速度20キロ以上で走れるよう努力しました。車に比べたら、自転車の速度は遅いわけですが、それでも、できるだけ、車との相対的な速度を縮めることで、車の流れに乗れるようにするためです。
朝6時30分。国道350号線は、すでに、車の量が増えつつありました。わたしが国道を走るのは、真野町から、すぐ隣にある羽茂町(はもちちょう)までの約15キロメートルほどです。
◆国道を、小木町方面に向かって走っていると、右斜め後方の海の向こうに、大佐渡の南端部分が、見えてきました。
◆国道は、部分部分に歩道がつくってありましたが、舗装状態がよくないうえに、途中からまったくなくなってしまいました。
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| 国道沿いの小高い丘で休憩しました。 |
わたしは、国道の左端を走りましたが、電信柱が張り出しているところは、どうしても道路右側に、はみ出さなければなりません。目視で後方確認をし、車の間合いを見ながら、電信柱を避けました。
◆この道路は、地図をみても、とくに名前がついているわけでもなく、素浜海岸(すはまかいがん)から沢崎鼻まで海岸沿いを通っています。
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| 素浜海岸に面した小さな漁村にて。 |
◆海岸線特有の起伏が続くため、国道を走っていたときに比べ、巡航速度は一気に15キロ前後まで落ちました。それに、車の通りが少ないと、気が抜けて、とたんに、のんびりと走りたくなってしまいます。
小木町は、小佐渡の南側先端に突き出た半島のような形をしています。わたしは、素浜海岸から、沢崎鼻をぐるりと回り、小木港にいく計画を立てていました。
◆素浜海岸には、小さな漁村がありました。海岸は、海水浴ができるような雰囲気ではなく、海で泳いでいる姿は見られませんでした。
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| 青い空。素浜海岸からは、これから行く沢崎鼻の岬が見えました。 |
◆素浜海岸から、大佐渡の南端部分の山脈を望みました。海水の透明度は、とても高く、遠くまで透き通って見えます。
| 沢崎鼻(沢崎灯台)に着く。(◆の段落か写真をクリックすると写真が見られます) |
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| 沢崎灯台にて。 |
しばらく走ると、沢崎鼻に着きました。沢崎鼻は、小佐渡最南端ということもあり、2〜3グループの島外からの観光客と、地元の中学生の仲良しグループと思われる男2人、女2人の子供たちがいました。
観光客は、車でキャンプに来ており、そのうち1台は、東京・練馬(ねりま)のナンバープレートを車に付けていました。それを見た、地元の女の子は、「なんだぁ、練馬かぁ〜」と、吐き捨てるように言いました。
たまたま、横で聞いていたわたしは、びっくり。「練馬ナンバーじゃだめなの? 品川たったらいいの? 多摩は? 新潟ナンバーは?」と、思わず、いたずら心まる出しで、聞いてみたくなりました。(笑)
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| 宿根木で、むかしながらの「石置屋根」が保存してある村落がありました。 |
わたしが推測するに、その女の子は、「大きくなったら、(東京のような)大都市に行きたいのだけど、(庶民的な)練馬じゃなくて、もうちょっとステータスのあるところに行きたい」という、あこがれの現れだったのではないでしょうか。
この年頃に、多くの人が経験することで、わたしも、遠い外国に憧れた記憶があります。その女の子は、たまたま、情報に敏感で、練馬のステータスを、彼女なりに把握するまでに至ったわけですが、他の子たちは、なんのことか、よく理解できていないようで、ポーっと聞いているだけでした。
その子たちは、自転車で沢崎鼻まで来ていました。しばらくすると、わたしが、これから行こうとしている小木町(小木港)の方向に向かって、自転車を漕いでいきました。わたしは、沢崎鼻の灯台近くの休憩所で、しばらく休憩してから、小木港に向かって出発しました。
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| お蕎麦とラーメン、カレーライス、アイスクリームを食べました。小木港の力屋観光汽船のレストランにて。 |
◆小木港に向かう途中に、宿根木(しゅくねぎ)という漁村があり、そこでは、むかしながらの「石置屋根」(いしおきやね)が保存してありました。
宿根木は、江戸時代から明治時代にかけて、漁船などの建造で栄え、今でも、当時の民家が残されています。この写真からも、石置屋根や、古来の民家の雰囲気を壊さないよう、地元が一致団結して保存に取り組んでいることがよく分かります。
宿根木を過ぎて、しばらく走ると、いよいよ小木港に到着です。時刻は、午後1時過ぎ。ちょっと、のんびり走りすぎてしまった感じはありますが、とにかく、お腹が減ったので、小木港のレストランで、お蕎麦とラーメン、カレーライス、アイスクリームの4点を、ペロリと平らげました。
| たらい舟に乗る。(◆の段落か写真をクリックすると写真が見られます) |
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| 小木港では、たらい舟に乗せてもらえます。 |
◆たらい舟は、地元小木町の力屋観光汽船(りきやかんこうきせん)が運行しているもので、大人ひとり450円で、約10分ほど、たらい舟に乗せてくれます。この写真は、たらい舟の乗舟券です。
たらい舟1隻につき、ひとりの舟頭さんがついてくれ、希望があれば、約5分ほど、たらい舟を漕がせてくれます。
舟頭さんを見ていると、すごく簡単に漕げるようですが、実際にやってみると、これがとても難しい。わたしは、一所懸命に、櫓(ろ)を漕ぎましたが、前にも後ろにも進みませんでした。
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| たらい舟の舟上で記念写真。 |
舟頭さんは、むかしながらの着物を着て、情緒たっぷりに、たらい舟を漕いで、観光客を楽しませてくれます。また、小木港の海は、エメラルドグリーンに輝き、とても美しい。
たらい舟のビジネスモデルは、ひとり450円の乗舟料の他に、もうひとつあります。たらい舟が、桟橋を離れて、小木港の港内に漕ぎ出すと、対岸でカメラを構えた人がいます。
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| むかしながらの着物を着て、情緒たっぷりに、たらい舟を漕いでくれます。 |
舟頭さんは、そのカメラの前に、うまく舟を進め、頭にかぶった日傘で顔をかくしてポーズをとります。そのタイミングで、カメラマンが観光客と、むかしながらの着物を着た舟頭さんと、たらい舟全体を写真に収めます。
◆下舟したのち、桟橋をもどると、切符売り場のところに、さっき、撮った写真が、すでに現像されて、プラスチック製の専用額縁に入って展示してあります。この写真は、そのとき買った専用額縁入りの写真です。
あまりの素早さにびっくりして、写真を見ると、舟頭さんとカメラマンの、阿吽(あうん)の呼吸によって撮られた写真のうまさに感動してしまいます。価格は1200円と、ちょっと高いのですが、思わず買ってしまう品質の高さです。
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| たらい舟を漕ぐわたし。前にも後ろにも進まない…(涙) |
わたしと同じ時間帯に乗った乗客のうち、わたしが見る限りでは、半分くらいの人が写真を購入するという人気ぶりでした。
佐渡島の他の観光地にも、同様の仕組みが導入されていることがありますが、たらい舟の場合は、別格です。
(1)多くの人が初めて乗る舟で、みんな興奮した表情をしている。(2)興奮していて、ついつい、カメラマンの言うなりに、カメラの方を向いてしまう。おまけに表情も明るい。(3)舟頭さんとカメラマンの絶妙なタイミング合わせの巧さ。
これらの要素が重なることで、とても動きがあり、表情ゆたかな写真ができあがるという仕組みです。
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| 映画『千と千尋の神隠し』の小道具として、たらい舟が登場したとのこと。たらい舟の乗舟桟橋のところに紹介がありました。 |
力屋観光汽船は、他にもモーターボートで小木港周辺を周遊するコースなどを設けています。沢崎鼻までの往復コースの場合、大人ひとり1400円です。
一見すると、たらい舟の450円の方が安く思えるのですが、これに、前述の絶妙な出来具合いの記念写真が加わると、1650円となり、なんだか、結果的に、たらい舟の方が高いという、非常に高度な収益モデルを確立しておられます。
また、わたしがカレーやお蕎麦を食べた小木港のレストランのガラス戸にも「力屋観光汽船」の文字が大きく書いてあり、おそらく、レストラン経営にも乗り出しているようです。いわば、小木港の総合レジャー企業という位置づけなのだと思いました。
わたしは、小木港での楽しいひとときに大満足し、自転車で帰路につくことにしました。
| 小佐渡山脈を越えて新穂村に帰る。(◆の段落か写真をクリックすると写真が見られます) |
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| Aコープ。佐渡島で、主要なスーパーのひとつ。 |
帰りは、小木港から佐渡一周線の県道45号線に入り、途中から小佐渡山脈を越える県道81号線に入りました。
◆県道81号線は「佐渡縦貫線」と呼ばれ、小木港から山のなかを通って、国中平野の畑野町につながります。この写真は、県道81号線の入り口付近にある大きな神社。ここから峠越えの山道が始まります。
◆たらい舟で、ちょっと遊びすぎたこともあり、わたしは、急いで県道81号線の峠まで登りました。この写真は、峠でひと休みしているところです。
峠を一気に下ると、畑野町のスーパー「Aコープ」のところに出ました。佐渡島では、Aコープのスーパーが何か所かあり、わたしは、翌日のお弁当を、Aコープで購入しました。
コロッケや唐揚げ、おにぎり、ビスケット、ラムネなど、わたしは、ついつい、たくさん買ってしまいました。ここから、お宿までは、自転車ですぐです。お宿では、おいしい夕食が待っています。(笑)
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