| 小田原駅を出発。 (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます) |
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暑さが残る2005年初秋、小田急線・小田原駅から標高約650メートルの箱根・仙石原に登りました。小田原方面から登るのは今回が初めてです。仙石原では幼い頃から好きだった童話「星の王子さま」をテーマにした美術館を見学して、作者の生い立ちや作品の背景にある物語を知りました。周囲には美術館や歴史ある高級別荘地が数多く点在しており、文化の薫りを楽しみながらの自転車ツーリングとなりました。
全国有数の高級旅館や別荘が広がる高原に、たくさんの美術館−−。それだけでも贅沢なのに、今回のツーリングは新宿から小田原駅まで小田急電鉄が誇る優雅な特急列車ロマンスカーに乗りました。ロマンスカーは、レールの上をなめるように静かに走り、大きな窓からは、都市部の灰色の街並みが緑の田園風景へ変わっていく様子を存分に眺めることができます。特急に乗って、憧れの箱根・美術館めぐりに行けるなんて、まるで夢のようです。 ただ、小田原駅から仙石原までは、マイカーや大型トラックなどクルマの通行量がとても多く、自転車で登るのは容易なことではありません。週末は多くの観光客でにぎわい、箱根方面へ通じる国道1号線はマイカーやトラックでごった返しです。また、周囲はとても険しい山々に囲まれていて、まさに「箱根の山は天下の険」です。 迂回できるルートはないかと地図をじっくり見つめていると、1本の細い林道が浮き上がってきました。「久野(くの)林道」です。大回りにはなりますが、クルマの通りが比較的少なそうです。道幅が狭いため、国道を疾走する大型トラックやダンプカーは通れそうにありません。他に選択肢はなさそうですし、今回は、この林道を通って仙石原に行くことにしました。ゆっくり観光するため仙石原で1泊する予定です。 | クリックすると拡大します。 |
| 迂回路で安全走行。 (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます) |
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東京方面から見て、仙石原に通じる林道は2通りあるようです。ひとつは小田原駅より手前の小田急線・新松田駅から仙石原北側の金時山付近を通る「明神(みょうじん)林道」。もうひとつは今回走ることにした「久野林道」です。二つの林道ともに全線舗装されていて、タイヤの細いロードバイクの方でも問題なく走ることができそうです。
明神林道は、以前に走ったことがあるので、今回は往路・復路ともに久野林道を走ることにしました。同じ道を往復するのは退屈とお感じになる方は、新松田駅から明神林道を経て仙石原に入り、帰りは久野林道を通って小田原駅に降りる周遊ルートを走るのもいいかも知れません。クルマの通りがまったくないわけではありませんが、国道に比べれば交通量は格段に少ないですし、大型トラックやダンプカーが走らないだけでも安心です。 久野林道へは、小田原駅から北へ1キロメートル弱ほど進んだところにある小田原税務署前の交差点から進行方向左へ入ると分かりやすいと思います。林道とはいえ、ほぼ平行して走る国道1号線が渋滞しがちな週末は、抜け道として利用される頻度が高まります。交通量が多いときは油断せず、十分注意して走る必要があります。 この付近の山林は分かれ道が多く、迷いやすいのが難点です。基本的には税務署前の交差点から西へ西へと進んで行き、途中にある数少ない目印を外さないようにするのがポイントです。箱根の入り口に位置する宮城野温泉までの主な目印は「辻村植物公園」と「久野霊園」、「塔ノ峰青少年の家」の3つの施設です。付近には案内板が立てられているので、手持ちの地図と照らし合わせながら慎重に進んでいきます。【詳細図1参照】 税務署前の交差点から有料道路・小田原厚木道路(国道271号線)の陸橋の下をくぐり、辻村植物公園までの約2.5キロメートル区間はかなりきつい登り坂が続きます。公園を過ぎると一旦短い下り坂になりますが、その後の久野霊園、塔ノ峰青少年の家まではほぼ一貫した登り坂です。塔ノ峰青少年の家のさらに先にある標高約550メートルの峠まで登ったところで登り坂は一段落します。 |
| 宮城野温泉。 (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます) |
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塔ノ峰青少年の家から宮城野温泉までの約6キロメートルの区間は、小さな起伏があるものの、ほぼ平坦な道が続きます。宮城野温泉から国道138号線を挟んで反対側が箱根登山鉄道の終着駅がある強羅(ごうら)温泉です。ここから強羅方面へ向かってもいいのですが、今回は宮城野温泉の集落を通り抜けて国道の北側を平行して走る林道沿いに仙石原へ進むことにしました。
林道沿いに山手へ進むと高級別荘地が広がっていました。広葉樹や針葉樹などさまざまな木々が生い茂る山の斜面に大きな別荘が点在しています。週末を高原で過ごそうというリッチな方々の姿が見られました。普通の集落は狭い空間に家が密集してしているイメージがありますが、ここの別荘地は家屋が隠れて見えなくなってしまうほど生い茂った雑木林の中にあります。 さらに坂を登ると視界が開けました。見下ろしてみると、別荘は雑木林の中に埋もれてしまい、屋根だけがかろうじて見えています。別荘地は山の斜面一面に広がっていますが、別荘と別荘の距離はざっとした目測で数十メートルも離れて密集した感じはありません。国道138号線の向こう側にも大規模な別荘地があるようです。第二次世界大戦前から別荘地の開発が進み、現在の規模に拡大したそうです。【詳細図2参照】 本日最高地点の標高685メートルまで登ったところに春山荘という古い別荘地がありました。1930年前後に分譲された別荘地で、箱根地区の中でも最古の歴史を持つそうです。戦前は旧軍部の別荘地としても活用され、この春山荘は主に旧海軍関係の利用が多かったそうです。国道138号線を挟んで反対側にある小塚山地域の別荘地は主に旧陸軍関係の利用が多かったとのことで、属性によって別荘を構える地域が分かれていたことがうかがい知れます。 | クリックすると拡大します。 |
| 星の王子さまミュージアム。 (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます) |
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春山荘から道なりに国道138号線まで下り、反対側へ渡ると仙石原に到着です。ここには美術館がたくさんあり、メインターゲットである「星の王子さまミュージアム」もあります。近くには化粧品メーカーのポーラグループが運営する「ポーラ美術館」やフランスのガラス工芸家ルネ・ラリック氏の作品が展示してある「箱根ラリック美術館」、ガラス工芸関連の美術館「箱根ガラスの森」などが点在しています。
わたしの大好きな童話「星の王子さま」をテーマにした星の王子さまミュージアムの広い駐車場の片隅に自転車を停めて中に入りました。ミュージアムでは飛行機の操縦士で作家でもあるフランスのサン・テグジュペリ(1900−1944年)の生涯を、巨大な舞台セットを駆使して詳しく紹介しています。 まず驚いたのは、展示室の建物全体に装飾を施して、テグジュペリの育ったフランスの町並みを見事に再現してあることでした。実物よりはいくぶん縮尺してあり、かわいい小さな妖精の町のようです。展示室では、幼少期や青年期、飛行家として活動した時期などに分類して、当時の写真や作者が作品を執筆した部屋などが忠実に再現してありました。 第二次世界大戦が始まり、亡命先のニューヨークでの暮らしぶりや、再びヨーロッパ戦線へ舞い戻って行方不明になるまでの経緯なども詳しく解説してありました。 飛行士である彼は、幾度となく飛行機の墜落などによる事故に遭いました。郵便輸送のために空路を開拓する仕事に就いていたときは、砂漠の真ん中に墜落して九死に一生を得たこともあったそうです。代表作の「星の王子さま」では、飛行士である「ぼく」が砂漠に不時着したとき、小さな惑星からやってきた王子さまと知り合うところから物語りが始まります。危機に直面した実体験が作品に色濃く反映されているようです。 これまで、写真や解説文中心の展示方法しか知らなかったわたしは、大胆でユニークな展示に驚きました。展示室の外側に装飾を施して異国の町並みを表現したり、室内で作者のゆかりのある部屋などを舞台セットのような技法を使って再現してあるのを見て、波瀾に満ちた作者の生涯がよく伝わってきました。わたしの大好きな「星の王子さま」をより身近に感じることができ、ミュージアムに立ち寄ってよかったと思いました。 |
| 仙石原の宿泊先。 (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます) |
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仙石原近くの民宿に泊まりました。数日前に電話で予約したのですが、このお宿を探し当てるのには相当の苦労を要しました。全国有数の観光地だけあり、手頃な価格で夕食を出してくれる民宿の数が少ない上に、どこも予約でいっぱいだったからです。
もっと早くから予約しておけばよかったのですが、自転車は天候に大きく左右されるため、晴れの予報が確実になってからでないとなかなか行動に移せません。電話で予約するとき「自転車で行くので、到着時間も分からないし、当日、急に雨が降ったら到着できないかも知れない」と告げると、「それじゃあ、うちに泊められない」と断られてしまうケースが続出しました。 普通の観光地の民宿ならば、「来れないときは、当日の朝までに告げてくれれば、キャンセル料もいらない」と親切な言葉をかけてくれることが多いのですが、箱根の場合はそうはいきません。「自転車で行く」と言った時点で断られてしまうこともありました。電話を掛け始めて10軒目くらいに、仙石原の外れの方でようやく「自転車で来てもいいし、来れなくなったときは当日の朝までに電話してくれればいい」と好条件を提示してくれた民宿を探し当てることができました。 せっかく仙石原まで登ってきたので、日帰りしてしまうのはもったいないです。お宿でゆっくり休んで、翌日も箱根の山々を自転車で走った方がきっと楽しいに決まっています。わたしの読みは的中し、次の日もすばらしい自転車ツーリングになりました。 | クリックすると拡大します。 |