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城山湖は山腹に埋め込まれた美しい宝石
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小田急唐木田駅から出発。 (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます)

 2004年晩秋、小田急多摩線の終着駅、唐木田(からきだ)駅から城山湖を目指しました。城山湖は標高約285メートルの山の合間に造られた湖です。青々と美しく輝く巨大な水の宝石が山頂近くの斜面に埋め込まれているように見えます。城山湖までは、小山田緑地公園や遊歩道の戦車道(尾根緑道)を通りました。

戦車道(尾根緑道)近くの谷戸池公園にて。低い日差しがポカポカと暖かい日でした。

 神奈川県北西部には、津久井湖や相模湖など大きな湖が並んでいます。この湖の建設や周辺の林業開発にともない、数多くの道路が整備されていて、そのうちの何本かの道は自転車で快適に走れます。東京都心からも近いため、多くの自転車ライダーが津久井湖・相模湖周辺の山林を走って楽しんでおられます。

 この地域には、わたしも自転車でよく出かけます。中央線や京王線、小田急線で気軽に行けるため、とても便利です。

 しかし、今回、わたしが目指した城山湖は、津久井湖や相模湖のすぐ近くにあるにもかかわらず、これまで一度も行ったことがありませんでした。その理由のひとつに城山湖の位置する“標高”があります。

 津久井湖の標高は126メートルで、津久井湖のさらに上流にある相模湖の標高でも166メートルしかありません。ところが、城山湖の標高は相模湖よりも遥かに高い285メートルもあるうえ、周囲を山に囲まれた要塞のような造りになっています。城山湖へ行く目的がなければ、まず城山湖を見る機会はほとんどありません。

 城山湖へは津久井湖のほぼ反対側から3本ほどの道が通っており、いずれも東京都側に向いています。このため、わたしは小田急・唐木田駅で降りて、小山田緑地公園や戦車道(尾根緑道)などをのんびり走ってから、城山湖へ登ることにしました。

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今回の活動地域を示した地図です。クリックすると拡大します。
走行ルートの全体図です。赤線が走行ルートを示しています。
走行ルート全体の標高差を示した図です。地形測定ソフトのカシミール3Dを使って制作しました。
小田急線・唐木田駅前にて。
快晴に恵まれました。
小山田緑地と戦車道(尾根緑道)。 (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます)
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多摩よこやまの道の真新しい案内板がありました。
多摩よこやまの道の推定ルートを示した図です。
多摩よこやまの道の歴史が書かれた部分をアップで撮りました。
緑豊かな小山田緑地公園を元気よく走りました。
これから戦車道を目指します。
小山田桜台のショッピングセンターの並びにある谷戸池公園にて。
陽の光が眩しい日でした。

 小田急線・唐北駅から京王線・橋本駅までは、自転車の走行に適した小山田緑地公園と戦車道(尾根緑道)があり、快適で安全に移動することができます。

多摩よこやまの道の案内板の前にて。万葉時代から美しい“横山”のシルエットが謳われていたそうです。

 小山田緑地公園は、唐木田駅からから町田市常盤町の桜美林大学までの約4キロメートルの間にある緑地公園で、戦車道とは、桜美林大学から橋本駅近くの多摩美術大学までの約8キロメートルの尾根沿いにある遊歩道です。

 わたしは、この道が大好きなので、橋本駅の手前の唐木田駅で電車を降りて、緑豊かな緑地公園や戦車道を通りました。

 唐木田駅から小山田緑地公園に差し掛かる手前に、真新しい看板があるのを見つけました。看板には「多摩よこやまの道」と書かれています。最近、整備された新しい遊歩道のようで、この道は唐木田駅の近くにある大妻女子大学から東へ6キロメートルほど離れた京王線・若葉台駅の近くまで続いているようです。

 戦車道のように舗装された道ではなく、未舗装の登山道のような道が尾根沿いに続いているようです。

 看板には、「多摩丘陵は武蔵(東京都や埼玉県などの旧国名)の国府(政務を取り扱う官庁)から眺めると横に長く連なる山々でした。夕暮れ時にシルエットとして浮かぶ、その美しい姿は、万葉時代(700年代あたり)の人々から『多摩の横山』『眉引き山』などと呼ばれていました」と、多摩よこやまの道の由来が書かれています。※括弧内は、があ子による注釈です。

小山田緑地公園にて。公園のすぐ隣には、地元の方が運営している農園がありました。

 遊歩道は、多摩丘陵の尾根道にあたる場所を、万葉時代から伝わる古い呼び名の「横山」をとって整備したとのことです。尾根道からは多摩の街並みがよく見えるそうです。わたしは、多摩よこやまの道を、自転車で走ってみたいと思い、看板のあった場所に自転車を停め、歩いて道の様子を見に行くことにしました。

 きょうは天気がいいこともあり、多摩よこやまの道には、多くの市民の方々が歩いておられました。わたしは、数十メートルほど多摩よこやまの道を歩いてみましたが、未舗装であるうえ、道幅が細く、人通りも多いと感じられたため、残念ながら自転車で走るのは困難だと判断しました。

 もっと先に行けば、道幅も広くなるのかも知れませんが、少なくとも入口の部分は、道が細すぎて、自転車で走るのに適していない印象を受けました。

橋本駅から国道413号線へ。 (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます)

 多摩よこやまの道をあとにしたわたしは、城山湖へ急ぐことにしました。この時期、日照時間が短く、のんびりしていると、すぐに日が暮れてしまうからです。小山田緑地を抜けると小山田桜台のショッピングセンターに出ます。郵便局や信用金庫、中規模なスーパーなどがあり、その並びに小さな池がつくってある谷戸池公園があります。この公園を通って南へ進むと戦車道と交差します。

城山湖周辺の立体的な地図です。カシミール3Dをもとに制作しました。

 戦車道は尾根沿いにつくってあるため、少しだけ坂を登らなければなりません。戦車道に合流すれば、今度は京王線・橋本駅方面に向かって自転車を勢いよく進めます。小山田桜台のショッピングセンターから橋本駅までの距離は8キロメートルほどで、わたしのペダルを回す速度で1時間ちょっとかかります。途中、信号などの障害物がほとんどないため、平均速度がぐんと上がります。

 問題は、橋本駅から津久井湖・城山湖方面に行く約5キロメートルの区間です。橋本駅周辺は、住宅地や工場などが急速に増えたためか、道幅が狭いうえにクルマの交通量が多く、とても危険です。すぐ近くには環状線でとても交通量が多いことで有名な国道16号線も通っています。

 津久井湖・城山湖方面へは、橋本駅付近の国道16号線から分岐している国道413号線を通るのが最も分かりやすいのですが、この道は歩道が狭すぎて自転車で通行するのはとても難しい。また、車道の左側を走るにも大型の路線バスやダンプカーの通行量が多くとても危険です。絶対にお勧めしない道です。

晩秋の戦車道(尾根緑道)を元気よく走りました。この道を通れば京王線・橋本駅まですぐです。

 大型車から見れば、たとえ前に自転車が走っていても、道幅が狭すぎて避けようがないのが実情だと思います。下手に対向車線にはみ出して追い越そうとすれば、正面衝突してしまう危険があるからです。このため、路線バスなどは「自転車と接触しても辞さない」覚悟を決めているかのように、自転車ライダーと今にも接触しそうな距離で追い抜いていくこともしばしばあります。

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太陽と緑のなかを走るのは気持ちいいことです。
真っ赤に色づいた晩秋の木々の葉。
戦車道は、もう目の前です。
落ち葉の絨毯がきれい。
戦車道上でカマキリが虫を食べていました。
水がおいしい!
橋本駅南口は交通難所。 (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます)
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城山湖の周辺図です。
青い宝石のような城山湖が姿を現しました。
城山湖とわたし。連なる山の頂上付近に湖が造られているのがよく分かります。
湖面が鏡のように静か。
堤防のところまで降りて写真を撮りました。
城山湖の水は、系統的には境川(さかいがわ)に属するそうです。境川は江ノ島まで続く快適なサイクリングロードが整備されていることで有名です。

 わたしは、やむを得ず国道413号線の南側を平行して走る地方道を走ることにしました。この地方道は、橋本駅南口から津久井湖・城山湖方面に伸びる道で、大和製罐や日本板硝子の工場の南側を通ります。橋本駅南口から大和製罐の工場までの約1キロメートルは立派な歩道がありますが、それ以降は旧態依然とした細い歩道と狭い車道が延々と続きます。

城山湖の管理事務所前に案内図がありました。湖の周囲には遊歩道がつくってあります。ただし、舗装してあるのは地形の制約から半分ほどにとどまっています。

 ただし、国道413号線のような大型車両が多量に通ることはありませんので、少しは“まし”といった感じです。この区間で、他にいい道があったらぜひとも教えていただきたいものです。

 わたしは、クルマに轢(ひ)かれないよう慎重に城山湖の麓(ふもと)まで自転車を進めました。麓の標高は約150メートルで、ここからさらに標高差で150メートルほど登ったところに城山湖があります。

 地図で確認すると、城山湖への道は3本ほどありますが、いずれも津久井湖とは反対側にあります。その背景には、城山湖と津久井湖は、隣り合っている湖であるにもかかわらず、標高差が約160メートルもあり、道路の建設が物理的に難しいことが挙げられます。城山湖から見れば、津久井湖は160メートルもの断崖絶壁の下にあり、とても自転車やクルマで登れるような状態ではありません。

 実は、そもそも、この激しい標高差をうまく「発電」という経済活動に利用するために城山湖を建設したそうなのです。城山湖は山頂に近い山腹を削り取るような形で水が溜められています。山頂に近いため大きな川はなく、放っておいたら見る見る間に水が干上がってしまいます。

 ところが、城山湖にはいつも満々と水が溜められています。この理由は簡単で、城山湖は標高差で約160メートル下にある津久井湖の水をポンプで汲み上げているからです。汲み上げた水を、再び津久井湖へ落とすことで発電用のモーターを回転させて、電気を起こす仕組みになっています。

 このようなダムを使った発電方法を「揚水式発電」と呼ぶそうです。関東地区では城山湖の他にも山梨県塩山市にある「上日川ダム」が揚水式発電用のダムとして有名です。このダムは有効落差が714メートルもあり、世界最大級の規模を誇っているそうです。

美しい城山湖。 (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます)

 麓から1時間ほど自転車のペダルを回すと城山湖に着きました。湖はいくつも連なる山々の山腹をえぐり取るようなかたちで建設されていました。山が湖の周囲を覆(おお)い込み、風が遮られているため、湖面はまるで鏡のように静かでした。

城山湖の周囲を自転車で走りました。冬の早い日暮れで、影が長く伸びています。空が青く澄んで、どこまでも広がっています。

 火山の崩落や陥没によってできた北海道の摩周湖や青森県の十和田湖などのカルデラ湖のような美しい姿に、わたしはすっかり目を奪われてしまいました。わたしは、摩周湖も十和田湖も写真でしか見たことはありませんが、きっと城山湖のように美しいものだと想像しています。

 うっとりと湖に見とれているあいだに、時間は午後2時になっていました。城山湖の周囲は遊歩道として整備されていますが、この遊歩道の冬季の利用時間は午後4時までとの案内が掲示されていました。午後4時を過ぎると日が陰り、山深い城山湖では事故の危険が増すため閉鎖しているようです。

 わたしは、城山湖を一周しようと考えましたが、どうやら舗装してあるのは半周分だけのようでした。残り半周は未舗装の登山道で、階段状になっているところもあるようです。登山道は、長距離歩道の「首都圏自然歩道」(関東ふれあいの道)にも接続しているようで、急な斜面を下って津久井湖へ降りられる模様です。逆方面に進めば国道20号線上にある大垂水峠へ続くそうです。

 きょうは時間が遅いため、未舗装の部分に自転車を進めることはしませんでしたが、今度、機会があれば、城山湖のさらに奥の方へ進んでみたいと思います。城山湖からの帰りは、津久井湖寄りの道を通って帰りました。この道からは、夕日を反射して輝く美しい津久井湖がよく見えました。

 山腹に忽然と姿を現す美しい城山湖に、わたしはすっかり魅了させられてしまいました。暖かくなったら何度でも足を運びたい湖のひとつです。

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青い空がまぶしい。
城山湖の堤防の遥か下には、たくさんの民家が見えました。この湖が標高の高いところにあることが実感できます。
城山湖の堤防の上で撮りました。遠くに八王子市街地の街並みが見えました。
城山湖からの帰り道から、夕日に輝く津久井湖が見えました。
津久井湖を背景に撮りました。城山湖の水は、この津久井湖から汲み上げています。


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