| ワルシャワ林道の由来。 (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます) |
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2004年夏、神奈川県南足柄(みなみあしがら)市を縦断する林道を走りました。この林道は複数の林道が組み合わさって続く大規模な林道で、南足柄市から小田原市まで続いています。すべて繋(つな)ぎ合わせる全長30キロメートルあまりになります。
林道は、それぞれの区間で「林道明星(みょうじょう)線」や「林道和留沢(わるさわ)線」などに分類されています。全区間で最も標高が高い区間は標高約500メートルあります。今回、わたしは時間の関係で全線を走破することはできませんでしたが、全線のうち約半分の15キロメートルを走りました。この区間で最も標高の高い箇所は約400メートルありました。 複数の林道が組み合わさっているため、全体を指し示す名称が見つかりません。このため林道のほぼ中央に流れる和留沢(わるさわ)の名前をとって、便宜的に「和留沢林道」と呼ぶのはどうかと考えました。しかし、和留沢林道だと既存の「林道和留沢線」と混同してしまう可能性があるため、ちょっと発音を変えて“ワルシャワ林道”と、ここでは呼ぶことにします。 ワルシャワ林道は、南足柄市のほぼ中央の山間部にある寺院・大雄山最乗寺(だいゆうざんさいじょうじ)付近から始まり、明神ヶ岳(みょうじんがたけ)、明星ヶ岳(みょうじょうがたけ)の山腹を縫うように蛇行しながら小田原市へ続いています。途中に分かれ道があり、小田原市方面と反対側へ進めば、箱根登山鉄道の終着駅・強羅(ごうら)駅に通じます。 今回のツーリングでは、強羅駅方面まで走る切ることはできませんでしたが、後日、小田原市の観光を担当する職員さんに聞いたところ「平行して走る国道1号線が渋滞したときの抜け道として利用されることもあるため、クルマの通行が頻繁にある」と、小田原市内と強羅駅を結ぶ部分は、クルマでも通行できるよく整備された林道であると話していました。 これに対して、わたしの走った区間は、未舗装部分が多く、クルマの通行はほとんどありませんでした。鳥や虫の鳴き声が山に響き、木漏れ日がきらきらと光っていました。豊かな自然に包み込まれるような美しい林道でした。 また、山腹を横断するような道のりであるため、激しい標高差はありません。未舗装部分が残っているにもかかわらず、とても走りやすい印象を受けました。誤解を恐れずに言えば、自転車のためにあるような理想的な林道です。 | クリックすると拡大します。 |
| 渋沢駅から峠を越えて。 (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます) |
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わたしは、小田急線・渋沢(しぶさわ)駅から、まずは大雄山最乗寺を目指すことにしました。渋沢駅周辺に広がる住宅街のあいだを抜けて峠を越えます。峠の地名は、そのまま「峠」と呼ばれており、峠にあるトンネルは「峠トンネル」と名付けられていました。峠の標高は約200メートルですが、渋沢駅の標高が170メートル近くもあるため、30分もペダルを回せば、峠を越えることができます。 峠トンネルを抜けると、これまでの住宅街とは一変して、田園風景が広がります。ここから標高約40メートルの酒匂川(さかわがわ)まで下ります。水田や畑、養鶏場などの農地を走り抜けるのは爽快な気分です。このあたり一帯は、沿線の開発に積極的な私鉄路線沿いにあるにもかかわらず、とてもよく農地が保存されています。クルマの通りも意外に少なく、あっという間に酒匂川まで下ってしまいました。 ここから標高約350メートルの大雄山最乗寺まで、ほぼ一貫して登り坂が続きます。最乗寺への参道は、クルマの通り抜けができない一本道です。この道を走るクルマはほぼ100%最乗寺への参拝客か、最乗寺よりさらに奥にある山へ登る登山客です。このため、クルマの交通量はそれほど多くありません。ただ、最乗寺行きの路線バスや貸し切りの観光バスなどの大型車がたまに通るので、気を抜くわけにはいきません。 酒匂川から最乗寺までまっすぐ続く参道の両脇には、大きな杉の木がたくさん生えていました。他の杉の比べて、ここの杉の背丈は際立って高いように感じました。幹もとても太い。恐らく参道の景観を守るために伐採を控えているのだと思います。しかし、登り坂の傾斜がきついため、参道を登るのは体力を使いました。 標高差で300メートルほど登り、最乗寺まであと一歩という地点で、進行方向左手に林道の入口を見つけました。ワルシャワ林道の入口です。でも、ここまで登ってくるだけで、わたしはすっかり疲れてしまったので、最乗寺で休憩させていただくことにしました。 |
| 最乗寺からワルシャワ林道へ。 (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます) |
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最乗寺には、ちょっとした商店や自動販売機が設置してありました。少しお腹も空いたので、自動販売機で冷たい炭酸飲料の大缶を買い、麓(ふもと)から持参してきたドーナツを食べることにしました。最乗寺境内には中国風の休憩施設・亭(ちん)があり、わたしはそこで、ちょっと早い昼食をいただきました。
体力がすっかり回復したのでワルシャワ林道を小田原市に向けて走り始めました。林道の入口には、オフロード型のオートバイでツーリングを楽しんでおられる方々がいました。すでに小田原方面からワルシャワ林道を走ってこられたとのことで、ここまでの道のりについて「砂利道のところもあれば、泥道もある一方、一部に舗装されたところもある」と路面の状況を親切に教えてくださいました。 わたしは悪路を走り抜く覚悟を決めてペダルを回し始めました。入口からいきなり未舗装の砂利道が続き、デコボコ道をガタゴトガタゴトと音を立てながら進んでいきました。しかし、山を登るわけではなく、山の中腹を稜線とほぼ平行に走るだけなので、たとえデコボコ道であっても、標高差が少なく、気持ちよく走ることができます。また、四輪車の通行がほとんどないことが、快適さを加速させます。 |
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| オフローダーとともに。 (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます) |
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しばらく林道を走っていると、先ほど入口で休憩していたオフロード型のオートバイのライダー=オフローダーたちのエンジン音が後ろから聞こえてきました。わたしの聴覚はいち早くこのエンジン音を察知したので、余裕をもって自転車を路肩に停め、後ろから来るオフローダーに道を譲ることにしました。 オフローダーたちは1列になり、時速10キロメートルくらいのゆっくりとした速度で走ってきました。総勢10台くらいの大所帯です。先頭のライダーが軽く頭を下げ、道を譲っているわたしに対する礼を示してくれました。途中、何台かのライダーも同じように礼をしてくれました。オフローダーは、わたしの横を通るとき、いまにも止まりそうなゆっくりとした安全速度で追い抜いていきました。 舗装してある一般道で、わたしの横を時速100キロメートルの猛スピードで追い抜いていくライダーがいるなか、彼らのように安全を配慮してくれる模範的なライダーがいることについて、わたしは同じライダーとして誇らしげな気持ちになりました。もっともわたしの場合は、エンジン付きのライダーではありませんけれど、安全に対する基本は同じです。 わたしが走ったときの林道の路面状態は、轍(わだち)や水たまりが多くありました。ここ数日間、雨が降ったわけではないので、山の湧き水や沢の水が路面に流れ出たものと思われます。 ただし、土砂崩れや落石など、道そのものが壊れているという状態ではありませんでした。ここは、切り立った斜面を削ってつくった道ではなく、比較的なだらかな山の中腹あたりの道であることと、周囲に比較的年数が経っている杉や雑木林がたくさん植えられてあるため、土砂が崩れにくい立地条件になっているのかも知れません。 |
| 鳥の声とともに録音する。 (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます) |
ワルシャワ林道は、いくつもの分かれ道があり、よほど気をつけないと道に迷ってしまいます。迷うといっても、地形そのものはそれほど複雑ではありませんし、限りなく里山に近いため、ずくに引き返す勇気があれば、おおかたは大丈夫です。 たとえば、明神ヶ岳などの山頂に方に迷ったときは、道がだんだん細くなって行き止まりになるか、獣道や登山道になってしまいます。「道が細くなったな」と感じたときは、すぐに引き返す勇気を出すことで事なきを得られます。また、裾野(すその)の方角へ迷えば、伊豆箱根鉄道沿いの町に出るので安全です。 わたしは、いくつもある十字路や丁字路で、どちらの方角が正しいのか迷ってしまい、地図と睨(にら)めっこしたり、付近の民家を訪れて道を聞いたりしました。このとき持っていた地図は10万分の1の縮尺(10万図)でしたが、ワルシャワ林道を正しく走るには、できれば3−5万図の詳しい地図が望ましいと思いました。 |
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| 和留沢沿いに山を下りる。 (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます) |
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今回、道に迷って累計で1時間近く時間をロスしてしまったことや、未舗装の道が長く続いたため平均速度が上がらなかったことが影響して、ワルシャワ林道のほぼ中間地点の和留沢(わるさわ)に到着した時点で午後4時をまわってしまいました。日没が6時過ぎであることを考えれば、残念ですが、今すぐに山を下りなければ危険です。 渋々ながら、和留沢沿いに山を下ることにしました。残りの半分は“次回のお楽しみ”です。和留沢から小田原駅、あるいは箱根登山鉄道の強羅(ごうら)駅まで続く林道は、走ることはできませんでしたが、地元の小田原市の観光担当職員さんにお話しを聞いたところ、「土砂崩れなどの情報はありませんので通行は可能です」と、道そのものは健在のようです。 今度は、小田原駅からワルシャワ林道に入り、最乗寺に抜けるルートで走り、ワルシャワ林道の全線走破を目指したいと思います。標高差も最大で500メートルほどと、それほど大きくないうえに、全線の距離も約30キロメートルと長くないため、1日あれば十分に完走できると思います。 ただ、路面抵抗の大きい未舗装区間が、推定で全区間の半分あまりを占めると考えられますので、わたしの平均時速は5キロメートルを上回らないと思います。このため林道区間を走っている時間だけで約6時間かかり、駅から林道までの時間や休憩時間を含めると、丸1日(約8時間)たっぷり費やす心構えが要ることでしょう。 |
| 小田原城に立ち寄る。 (◆の段落や写真を押すと音声や拡大写真が見られます) |
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今回、初めて走ったワルシャワ林道でしたが、適度な標高と起伏があり、自転車で走るのに最適な林道のひとつだと感じました。次回は“全線走破する”という大きな楽しみを胸に抱いて、小田原駅から電車に乗って帰りました。自転車に乗ることで、楽しみがまたひとつ増えたことにとても満足感を覚えました。 |
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