| 秦野駅から出発。(◆の段落か写真をクリックすると写真が見られます) |
04年2月、朝8時半、秦野駅に着きました。前回(02年8月)、ここへ来たときも、ヤビツ峠へ自転車で登ったときでした。自転車に乗り始めて、まだ数か月と日が浅く、輪行(自転車を電車やバスで運ぶこと)し始めたばかりのときでした。 真夏で暑かったこともあり、標高761メートルもあるヤビツ峠へ登るのは、とても辛かった覚えがあります。登り坂の半分くらいは、自転車を押して歩き、心の中では“二度と来るものか!”と思いました。
あれから約1年半、わたしなりに登り坂を登る練習をしてきました。標高1000メートル級の峠にも登った経験もしました。今回、再びヤビツ峠への挑戦をすることを決め、秦野駅にやってきました。目標は、一回も、自転車を押して歩くことなく、峠まで登り切ることです。 秦野駅前には、ドーナツ屋さんがありました。ヤビツ峠で食べようと思い、チョコのドーナツと、砂糖が塗ってあるドーナツを買いました。無事、自転車で峠まで登り切ったら、このドーナツが、どんなにおいしく食べられることか。今から、とても楽しみです。 |
| バスの誘惑。(◆の段落か写真をクリックすると写真が見られます) |
ドーナツをリュックに入れて、自転車を組み立てようとしていたときでした。わたしのすぐ目の前に、ヤビツ峠の中腹にある“蓑毛”(みのげ=標高約300メートル)まで行くバスが停まっていました。バス停に掲示してある時刻表を見ると、あと10分くらいで出発するようです。 ふと、頭のなかに、「このバスに載せてもらえば、楽ちんだろうな。今日、もし、ヤビツ峠への登り坂が登れなかったら、また悔しい思いをするだろうな。バスだったら確実に登れる…」という考えが浮かびました。 でも、それでは、ヤビツ峠まで来た意味がない! わたしは葛藤(かっとう)を起こして、自転車を組み立てる手が止まってしまいました。「組み立てなければ、このままバスに乗せてもらえる」。いや、それではダメだ。バス出発まで、残り5分を切ったときでした。秦野駅から中高年の男女の団体が、登山服姿で10数人出てきて、バスに乗り込みました。
また、ほぼ同時期に、親子連れや若いアベック、地元の方など、次着きと乗り込み、バスはみるみる間に満席となり、立ち客まで出てきました。もう自転車を乗せる余裕はありません。 わたしは、ふと我にかえりました。「自転車を乗りに来たのに、バスに乗ってどうするんだ!」。邪悪な考えを断ち切ったわたしは、猛然と自転車を組み立て始めました。次の蓑毛行きバスが出発するのは約30分後。そのバスより、わたしが早く蓑毛に着けばわたしの勝ちです。わたしとバスの激しい競争が始まりました。 |
| バスとの激しい競争。(◆の段落か写真をクリックすると写真が見られます) |
秦野市街地を走り抜け、国道246号線を横切り、県道70号線へ入りました。県道70号線から急に登り坂がきつくなります。目指すべきヤビツ峠はこの県道上にあります。両手、両足の筋肉に力を込め、ペダルを力強く回すことに神経を集中しました。県道70号線は、登れば登るほどクルマの交通量が少なくなり、快適に走れるようになります。 暖かい日だといっても、まだ2月。午前中の気温は10度以下で寒く、わたしは上着を着込んで自転車を漕いでいましたが、ペダルを回すごとに、身体の芯が発熱してきました。どんどん暑くなってきて、がまんできまなくなりました。路肩へ自転車を停めて、上着を脱ぎました。
秦野駅を出発して約30分がたっていました。ちょうど今頃、蓑毛行きのバスが秦野駅を出発する頃です。バスは、バス停で停車しながら、わたしを追い上げてきます。これからが勝負の本番です。バスの直噴ディーゼル1万2000CCの大型エンジンのウナリ声が、背中のうしろから聞こえてくるような気分になりました。
上着を脱いで身軽になり、勢いよく自転車を走らせました。途中、何度かディーゼルエンジンの音を立てるクルマが追い抜いていきましたが、バスではありませんでした。エンジンのうなり声が遠のくと、あたり一面、ふたたび、静かな道に戻ります。 蓑毛のバス停にあと少しというところで、後ろのほうから、大きなエンジン音が聞こえてきました。バスです! ここで追い抜かされては、元も子もありません。四肢の力を最大にして、蓑毛バス停に滑り込みました。このバス停は、バスが反転できるように、広場がつくってあり、わたしは、自転車をふちに寄せて、あとから来たバスが入りやすいように場所を譲りました。わたしの勝利です! |
| 菜の花台の展望台。(◆の段落か写真をクリックすると写真が見られます) |
バス停で、休憩してから、次の目標である「菜の花台」に向かいました。菜の花台は、ヤビツ峠の約3キロほど手前にあり、展望台として整備されています。ヤビツ峠そのものは、四方を山に囲まれて、展望がきかない峠です。これに対して、菜の花台は180度くらいの展望を楽しめます。西は富士山、正面は秦野市街地や相模湾、東は鎌倉市方面まで見ることができます。展望施設のひとつとして、10メートルくらいのヤグラ(物見台)もあります。
この日は、少しガスがかかっていましたが、展望台に立つと、眼下に秦野市街地が広がっているのが、よく見えました。西の方角には、いくつもの山の向こう側に、雪をかぶった富士山が見えました。周囲の山々より、頭ひとつ抜きん出た富士山は、とても凛々(りり)しく見えました。 富士山との距離が遠く、うっすらとガスがかかっていたため、写真では、うまく富士山の姿を写し取ることはできませんでした。肉眼ではよく見える風景なのに、これを写真で風景をうまく捉えようと思うと、なかなか難しいことです。 |
次は、「【後編】ヤビツ峠を過ぎると雪と氷が広がる」に続きます。ここをクリック!
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